外国人を雇うまでの流れ
日本人の雇用と異なる点もありますので、手続きに漏れが起きないよう注意しながら進めていきましょう。
募集をかける
最初に、求人を募集して就業希望者を集めます。募集をかける媒体は、日本人の雇用と同じようにハローワークや雑誌、広告、自社のSNS、ホームページなどで募集できます。
これとは別に、日本語学校(大学・語学学校など)からのあっせんや、外国人専門の派遣会社、紹介会社からの紹介なども、有効的な手段です。
面接を行う
就職希望者が集まったら、次に面接を行いましょう。面接を行う前に確認すべき点があります。それは「日本への在留資格を持っているか」または「これから取得できるか」を必ず確認しないといけません。
在留資格を持っている場合、資格の種類内容と募集企業の業種に適している必要があります。また、これから資格を取得するならば、学歴や職歴を正確に確認しましょう。
在留資格がない状態で就労をスタートすると「不法就労助長罪」とみなされます。入管法( 出入国管理及び難民認定法)第73の2で規定されたもので、外国人本人は強制送還、雇用主は3年以下の懲役あるいは300万円以下の罰金もしくは両方が科せられます。
資格が確認できた、または資格を取れそうなことが明確になれば、面接を行いましょう。
雇用契約書を取り交わす
募集要項を満たす人材であれば、雇用契約書を交わします。日本人は、雇用契約書を交わさない企業も一定数存在しますが、外国人に対しては必ず契約書を交わすことが重要です。
日本と海外では法律や習慣の違いがあるため、認識の違いによるトラブルを起きるのを防がないといけません。
契約書の内容は、従来の契約書と同じで問題ありません。しかし、言語は母国語または英語が良いでしょう。
手続きを行う
契約書を交わしたら、在留資格の取得の手続きを行います。
資格の申請方法は、雇用する外国人が持っている在留資格によって異なるので、間違えないように手続きしなくてはいけません。
なお、「就労ビザ」という言葉は、在留資格の一般的な通称であり、正式名称ではありませんので、覚えておきましょう。
入国管理局で、次の書類を発行してもらう必要があります。
・在留資格認定証明書…海外から新たに来日していて、これからビザを取得する場合・就労資格証明書…既に日本に住んでいて、就労ビザを持っている場合
就労ビザ以外のビザを持っている場合は、入国管理局で在留資格変更許可申請書を提出し、在留許可申請をしなくてはいけません。これから海外より来日する場合には、在留資格認定証明書を本人に郵送したのち、自身で現地の日本大使館に出向き、ビザの手続きをしてもらいます。
無事にビザが取得できたら、外国人を雇い入れる旨をハローワーク(厚生労働大臣)に届け出ることが義務付けられています。届け出が完了したら、仕事を始めましょう。
外国人を雇うときに重要な在留資格とは?
在留資格とは、外国人が日本に在留する期間内に、一定の活動を行うための条件を定める資格のことです。
これに対して、ビザ(査証)は、外国から日本への入国を許可するよう推薦するものですが、正式に入国が許可されるかどうかは入国審査時に入国管理局が判断します。
在留資格は、全部で33種類ありますが、このうち就労可能な資格は28種類となっています。留学、文化活動、短期滞在、研修などの資格では、就労は許可されません。
ほかの在留資格も、一部を除き携わることが可能な業種が異なるのでしっかり確認しなくてはいけません。
3か月を超える在留資格を持つ外国人に対しては、資格を証明するための「在留カード」が発行されます。
在留カードは、パスポートに代わる身分証明書であるとともに、法で定める各種許可に必要な許可証の役割も担っています。
このカードは、法律により常時携帯が義務づけられているほか、在留資格ごとで有効期限が定められています。企業側は、有効期限が経過する前に更新申請を促すよう、お知らせをしましょう。
外国人を雇うには受け入れ体制の整備も必要
外国人は、母国と生活環境が異なる日本で働くことで、大きな不安を抱えています。
受け入れる企業側が、体制を整備することで、優秀な外国人が長く働ける環境を整えられます。次のような取り組みを推進しましょう。
生活の基盤を整えるサポートをする
外国人が日本の生活に早く馴染むことで、公私ともに充実した日々を送れるようになります。そのためには、まず企業側から生活の基盤を整えるサポートをしなくてはいけません。
来日する際の飛行機の手配や、日本で住むための住居確保および役所での各種登録、電気や水道、銀行などのインフラ手続きなどは、日本で仕事をするのに必要不可欠な手続きです。
特に企業側は、これらの細やかなサポートが求められます。毎月、母国にいる家族に生活費を送金する外国人もいますので、送金に関する情報を提供するのも重要です。
法務省の出入国在留管理庁が、「外国人生活支援ポータルサイト」を開設しています。この中で紹介されている「生活・仕事ガイドブック」には、日本に住むために必要な役所の手続きや医療についての説明が分かりやすい日本語で掲載されています。
企業は、安心して仕事が始められるようしっかりサポートしましょう。
社内でも準備をする
社内でも、外国人を受け入れる準備を進めることが必要です。正社員または常用社員として外国人を雇用したら、企業はハローワークに対して「雇用保険被保険者資格取得届」を14日以内に届け出る義務があります。要件が合えば、健康保険や厚生年金などの手続きも行う必要があります。
雇用する外国人が10人以上いる企業では、現場において「雇用労務責任者」の選任が求められます。
雇用労務責任者とは、外国人の労働状況を監督して、外国人が働きやすい環境を構築する役割を持った担当者のことを指します。
また、日本語が得意ではない外国人に対して、日本語教育を行う取り組みも重要です。スムーズに意思疎通をはかり、社内や地域社会で円滑に過ごせるためにも、日本語の習得が欠かせません。
ほかにも、仕事に関して外国人が相談しやすいよう、助言を行う「メンター」の配置もおすすめです。メンターは、別の部署に属していて年齢が近い先輩社員が担当するのが一般的です。
近年の外国人労働者を採用している企業は、メンターを置くことで、日本の生活に慣れない外国人のメンタル面をサポートする動きが多く見られるようになってきました。
まとめ
外国人を雇う際の手続きは、在留資格の確認や手続きは漏れがないよう厳重な注意が必要です。煩雑な業務なため、専門家に助言をもらう企業も増えてきています。
また、雇用のルールを遵守したうえで、生活環境なども同時にサポートしていく体制を整えることが大切です。これらを達成することで、外国人が安心して長く働ける企業に発展していくでしょう。