外国人技能実習生の住民税はどう扱えばいい?

「外国人技能実習生を受け入れたけれど住民税の手続きの方法がわからない。」、「そもそも、外国人技能実習生は住民税を納める必要があるのだろうか?」 このようなお悩みを抱えている経営者の方のために、この記事では「外国人技能実習生の住民税」について手続きの方法や注意点を解説しています。 外国人技能実習生の住民税について正しい知識を得ることで、不要なトラブルを避けられるので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事は約6分で読み終わります。

住民税の基本的な仕組み

外国人技能実習生の住民税について解説する前に、住民税の基本的な仕組みについて簡単に説明していきます。

なぜ住民税の仕組みを理解する必要があるかというと、日本に住所があり、所得のある方は、日本人だけでなく外国人も住民税を納める必要があるからです。

のちほど詳しく解説しますが、一部の国を除いた日本在住の外国人は、住民税の納税義務があります。

住民税とは

住民税はお住まいの地域のさまざまな費用を、その地域に住所がある個人や法人が負担する税金のことです。

住民税は「道府県民税」と「市町村民税」から構成されていて、その年の1月1日に住所がある地域の道府県と市町村から課税されます。そのため、1月2日以降に住所が変わった場合は、転居前の市町村に住民税を納めることになるでしょう。

住民税には、それぞれの所得に対して課税される「所得割」と、所得の金額にかかわらず一律に課税される「均等割」があります。

住民税の仕組み

所得割は、前年度の所得から各種控除を差し引いた金額に対して、道府県民税と市町村民税を合わせて10%が課税される仕組みです。

前年度の所得がなければ住民税は課税されませんので、新卒で入社した社会人1年目の方には住民税が発生しません。

また、住民税は道府県民税と市町村民税にわかれていますが、納める場所はお住まいの地域の市町村役場です。

基本的にサラリーマン(給与所得者)の方は給料から天引きされる特別徴収になるので、勤務先の企業が従業員の代わりにそれぞれの市町村役場に住民税を納めています。

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外国人技能実習生の住民税の処理方法

住民税の仕組みが理解できたら、いよいよ外国人技能実習生の住民税について解説していきます。

外国人技能実習生であっても、住民税の手続きは日本人とほぼ同じなので、これまでも既存社員の住民税の手続きをしてきた方であれば、問題なく進められるでしょう。

先ほどもお伝えしたとおり、住民税は前年度の所得に対して課税される仕組みですので、入社1年目と2年目以降では扱いが変わります。

1年目の扱い

来日1年目の外国人技能実習生は、税金の区分上では「非居住者」になります。住所不定というわけではありませんが、前年度の所得もないので、住民税の納付義務はありません。

ただし、所得税は収入に応じて「一律20.42%」が課税されるので、所得税は納める必要があります。つまり、外国人技能実習生を雇用したはじめての年は、住民税に関する手続きはありません。

しかし、外国人技能実習生に対しては、2年目以降から住民税が発生することを事前に伝えておきましょう。なぜなら、住民税の支払いがはじまると、手取り額が減少するからです。

そのほかにも、税金が給与から天引きされる仕組みは海外ではほとんど採用されていないため、住民税が天引きされることを事前に伝えておかなければ「給料を減らされた!」と、外国人技能実習生の方が驚いてしまう可能性もあります。

2年目以降の扱い

来日2年目以降は、日本人と同じように住民税が課税されます。

外国人技能実習生も会社に勤めている給与所得者なので、特別徴収の対象になります。そのため、会社側で毎月給与から住民税を天引きし、外国人技能実習生が住んでいる市町村に住民税を納めなければなりません。

特別徴収の手続きも日本人と同じです。毎年1月31日までに外国人技能実習生が住んでいる市町村に、以下の書類を提出します。

・給与支払報告書個人別明細書
・給与支払報告書総括表

住民税の税額は、提出した給与支払報告書に基づいて市区町村で計算したものが、その年の5~6月ころに会社に通知されます。その後、給与から天引きを行って住民税を納付する流れになります。

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外国人技能実習生の出身国との租税条約などによっても異なる

外国人技能実習生の住民税は、新卒で入社した社員と同じような流れで手続きを行います。

しかし、外国人技能実習生の出身国によっては、住民税と所得税が免除される場合があるため注意が必要です。

二重課税を防ぐための租税条約

どの国でも、所得に対して税金を納める仕組みがあります。しかし、海外で働いて得た所得に関しては、所得を得た国と母国の両方から課税されてしまう恐れがあるため、それぞれの国同士で租税条約を結び、二重課税にならないように制度を定めているのです。

このことから、日本と租税条約を結んでいる国から来日している外国人技能実習生は、条件を満たすことで住民税や所得税が免除されます。

ただし、租税条約を結んでいる国であっても、条件を満たさなければ免除にはなりません。

住民税や所得税が免除される条件については、それぞれの国によって異なるので、雇用する外国人技能実習生がお住まいの市町村に確認してみてください。

住民税を免除するための必要な手続き

雇用する外国人技能実習生の住民税が免除される場合、企業は住民税を免除するための届出をお住まいの市町村に提出しなければなりません。

提出する書類はそれぞれの市町村によって異なるので、事前に確認しておくと安心です。また、届出は毎年必要なので忘れずに行いましょう。

ちなみに、住民税の免除に関する手続きはお住まいの市町村で行いますが、所得税の免除に関する手続きは所轄の税務署で行います。住民税と所得税の両方が免除になる場合は、それぞれに届出を出す必要があるので、ご注意ください。

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外国人技能実習生が帰国するときには

外国人技能実習生の出身国によっては住民税が免除になるため、事前の確認が必要です。しかし住民税については、もうひとつ気をつけなければならないことがあります。

それは、外国人技能実習生が帰国するときです。

住民税は前年度の所得に対して課税されるため、帰国する場合でも住民税の納付義務は残ります。そのため、外国人技能実習生が帰国する際は、お住まいの市町村に給与所得者異動届出書を提出して、残りの住民税を支払わなければならないのです。

残りの住民税を支払う方法は、退職時の給料や退職金から一括で天引きする方法と、日本に住んでいる方に納税管理人になってもらい、本人に代わって住民税を納めてもらう方法があります。

住民税を納めないまま外国人労働者が帰国してしまうと、会社に請求が行く可能性もあるので、きちんと手続きを行いましょう。

住民税とは直接関係ありませんが、外国人技能実習生が帰国する際は住民票の転出届けや賃貸アパートの解約手続きなども必要です。

手続きが不十分のまま外国人技能実習生が帰国してしまうと、企業側が金銭的な負担を強いられる場合もあるので、忘れている手続きがないか確認しておくと安心ですね。

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まとめ

外国人技能実習生の住民税について、手続きの方法と個別の対応について解説してきました。

外国人技能実習生も日本人の従業員と同じように住民税を納める必要があります。ただし、外国人技能実習生の出身国によっては、免除になる場合があるので、お住まいの市町村に確認してみてください。

また、外国人技能実習生が帰国する際は、残りの住民税をどのような方法で支払うのかを決めることも重要です。

この記事を参考にして、外国人技能実習生の住民税を正しく処理していきましょう。