特定技能とはどんな在留資格か
日本において、とくに人手不足が深刻な業種の労働力不足を、外国人労働者で補うために新設された在留資格が特定技能です。身に着けた技能の習熟度と従事する業種によって、1号と2号の2種類に分けられます。ここでは、それぞれの資格について詳しく説明します。
特定技能1号
日本で働きたい外国人に広く間口が開かれているのが、特定技能1号です。1号の資格を保有する外国人は、外食や宿泊、介護など、労働力不足が深刻な14の業種で働くことが認められています。
特定技能1号の資格取得には、一定以上の日本語能力と各業種における専門技能が必要とされ、それぞれ日本語試験と技能試験に合格しなければなりません。
技能試験は、就労を希望する業種の団体によって業務ごとに作成されたものを受けることになります。
特定技能1号を取得することで、通算5年まで日本で滞在することができるようになります。ただし、滞在を認められるのは本人のみで、家族を日本に連れてくることはできません。
特定技能2号
特定技能2号は、建設と造船・船用工業の2分野でのみ認められた資格です。取得には上記2分野に就労する1号取得者が業務を修了し、試験に合格する必要があります。試験合格には熟練した技能が必要とされるため、1号よりも難易度は上がります。
取得が難しい分、2号取得者は業界の発展にとって必要不可欠な人材と見做されるため、在留資格は1号よりも優遇されます。
たとえば、在留期間は更新制となり、要件を守る限り、日本で定年まで働くことができるようになります。また、配偶者と子どもを日本に呼び寄せることも認められます。
特定技能1号の受け入れ対象国
特定技能の受け入れ対象国は、2019年6月現在、周辺アジアの国々に限定されています。受け入れ体制の構築も急ピッチで進められており、制度は2年毎の見直しを受けながら、社会状況に則した運営が行われる予定です。
以下では、受け入れ国や我が国の受け入れ体制について説明します。
9ヶ国から受け入れが行われる
特定技能の対象国は、以下の9ヵ国です。
・ベトナム
・フィリピン
・カンボジア
・中国
・インドネシア
・タイ
・ミャンマー
・ネパール
・モンゴル
どの国も地理的に近いアジアの周辺諸国です。受け入れの人数は、全業種合わせて34万5,150人を上限に定めています。
制度は2019年4月から運用を開始されましたが、1号技能試験の導入は介護、外食、飲食の3分野のみとなり、他の分野では、しばらくの間は技能実習生からの移行に頼ることになります。
なお、2019年6月現在、2号の導入は2021年を予定しています。
国としての受け入れ体制
技能実習制度と異なり、特定技能では、来日外国人を一人の「労働者」として扱います。そのため、各業種の現場で即戦力とするためにも、特定技能外国人には、就労する業務に関する基礎的な技能の他、日常会話レベルの日本語能力も求められます。
また、雇用する企業には、外国人労働者に日本人労働者と同等以上の報酬を支払う義務が課せられます。さらに、外国人であることを理由に長時間労働を課すなど、日本人と外国人の待遇を差別化することは禁止されています。
さらに、外国人労働者には、同業種の企業に転職する権利も認められます。
技能実習制度では、外国人労働者から法外な金銭を中抜きするブローカーの存在が問題視されていました。実習生は、多額の借金をして来日するため、就労先が劣悪な労働環境であっても、企業に改善を求めることや、第三者に助けを求めることができなかったのです。
そこで、特定技能外国人の受け入れに当たって、政府は、悪質なブローカーを排除するために、これらの国と2国間で協定を結ぶことを取り決めました。
以上のように、特定技能の制度運営では、技能実習生どの問題点を踏まえて、慎重な運営がなされています。
特定技能外国人を雇用する場合の手順
特定技能在留資格が作られたことによって、外国人労働者の求人はより自由度が広がりました。また、在留外国人の権利を守るため、雇い入れには複数の手続きが必要とされています。
以下では、外国人を雇用するときの方法や手順を詳しく解説します。
募集をかける
特定技能外国人の求人を行う主な方法は、以下のようになります。
・ハローワーク
特定技能外国人は、就労を許可されている業種であれば、自由に就職先を選ぶことができます。そのため、日本人求職者と同様の方法で求人を探すことが可能です。就職や転職の際は、ハローワークを利用する外国人も増えることが予想されます。
・職業紹介事業者
外国人労働者が最大34万人にまで増えることが予想されるなか、販路拡大のため、外国人人材の斡旋を行う職業紹介事業者も出てくることでしょう。
現行で日本人向けの紹介を行う企業の他に、技能実習生の送り出し機関の日本法人や、監理団体が運営する事業者などの参入が見込まれます。
・登録支援機関
登録支援機関とは、特定技能外国人の支援計画の作成や、実際に日常・社会生活などの支援を行う組織です。なかには職業紹介を行っている機関もあり、登録支援機関から外国人労働者の斡旋を受ける企業も多くなると考えられます。
・自社ホームページで募集
特定技能では、技能実習制度とは異なり、外国人労働者を探すに当たり、特定の機関や団体から紹介を受ける必要はなくなりました。そのため、自社で採用に特化したWEBサイトを制作して、外国人労働者を募ることも可能です。
その際、WEBサイトの各ページの内容を多言語化するなど、求人のための配慮が必要になります。
採用するにあたって必要な手続き
特定技能外国人との契約では「特定技能雇用契約」を結びます。内容は労働時間や報酬額の他、差別禁止や帰国に関わる旅費、生活支援など特別な条項についても記載されています。
特定技能外国人との雇用契約を結んだ後は、日本や日本語に不慣れな外国人を招くために「1号特定技能外国人支援計画」を策定しなければなりません。これは、外国人が日本で支障なく生活するために必要な支援を盛り込んだ計画です。
具体的には、外国人の出入国時の送迎や居住する住宅の手配、苦情・相談対応、雇用契約解除時の転職支援等の内容を取り決めます。
外国人が特定技能資格を取得し日本で就労する道は、出身国で試験に合格した後で来日する方法と、既に他のビザで来日している者が、日本国内で特定技能を取得する方法の2つがあります。
後者の場合、雇用契約締結後に、出入国在留管理庁で保有している在留資格を特定技能に変更しなければなりません。在留資格の変更は、原則的に本人が行います。受け入れ先企業は、本人が、無事に変更申請が行えたかを確認しましょう。
まとめ
特定技能外国人の受け入れ対象国は、日本周辺のアジア諸国に限定されています。受け入れ可能人数も、約34万人の上限付きです。
しかし、限定的とはいえ、34万人にのぼる外国人労働者の受け入れは、人手不足が深刻な業界にとって、良案であるといえるでしょう。
制度の本格的な始動はこれから先になりますが、外国人労働者の受け入れを検討している企業は、優秀な人材を確保するために早めに準備をしておくことが大切です。