特定技能の「登録支援機関」とは
特定技能に関する基礎知識
特定技能とは、2019年4月から始まる新しい在留資格のことで、改正出入国管理法によって創設されました。
現在の「技能実習」をはじめとする在留資格では、認められていなかった業界や雇用条件で、海外からの人材を受け入れができるようなります。
建設業界や造船業界、宿泊業界、外食産業など深刻な人材不足が著しい業種で、外国人労働者が働くようになれることが、大きな変化です。
特定技能ビザは、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類にわかれていて、1号の修了者が試験をパスすると2号に進むことができます。
「特定技能1号」では、外国人支援計画書を作成して、提出することが求められます。外国人支援計画書とは、外国人材が日本で仕事をするだけではなく、日常的な生活を送れるように支援をするための計画書です。書類作成は「登録支援機関」が行わなければなりません。
(参照:法務省・新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について)
特定技能と技能実習の違い
特定技能と比較される在留資格が、技能実習です。それぞれの違いを説明します。
「外国人技能実習制度」とは「我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上国 等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを 目的とする制度」です。
(引用 厚生労働省 運用要領)
技能実習では、技能等に習熟・熟練レベルによって1号から2号、3号への移行制度が設けられています。285,766人の技能実習生がいて、なかでもベトナム人や中国人、フィリピン人が多くを占めています。
技能実習法では「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」と規定されています。
(引用 電子政府の総合窓口 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)
技能実習には、国際協力の推進という目的があるため、人手不足を解消するために外国人労働者を受け入れることはできません。
即戦力となる人材を海外から雇用するために、新設されたのが特定技能です。とくに「特定技能1号」では、対象となる14業種で単純労働者を雇用することができます。しかし、最長滞在年数は通算で5年が上限。家族の同帯は、基本的には認められていません。
「特定技能2号」では、熟練度の高さが求められますが、永住が可能となり、家族を出自国から呼ぶこともできます。対象業種は2業種に限られます。
特定技能では、外国人労働者に対する日本在留支援が必要とされています。支援を行う組織が、「登録支援機関」です。技能実習で同じ役割を担っていた「監理団体」は、「登録支援機関」へ移行していくと想定されています。
「登録支援機関」「特定技能所属機関」とは
「登録支援機関」とは
「登録支援機関」は、法務大臣によって認可された組織であり、主体は社労士を含む専門家や業界における団体、民間企業など幅広くあります。
「登録支援機関」の役割は、外国人支援計画書を作成するだけではありません。「特定技能所属機関」と呼ばれる、海外からの労働者を受け入れる企業にかわって、「特定技能1号」取得者の活動・生活を安定的に、円滑に行うことを支援している機関です。
「登録支援機関」による支援の内容は、以下のとおりです
(1)入国前の生活ガイダンスの提供
(2)外国人の住宅の確保
(3)在留中の生活オリエンテーションの実施
(4)生活のための日本語習得の支援
(5)外国人からの相談・苦情への対応
(6)各種行政手続についての情報提供
(7)非自発的離職時の転職支援
(8)その他
(引用 法務省 新たな外国人材の受入れに関する 在留資格「特定技能」の創設について)
「特定技能所属機関」とは
「特定技能所属機関」とは、外国労働者と雇用契約を結ぶ企業であり、海外からの就業者を受け入れる企業です。外国人が所属できるのは、1機関に限られており、複数の「特定技能所属機関」と契約を締結することは認められていません。
「特定技能所属機関」は労働関係法令や社会保険関係法令を遵守することが重要とされています。例えば、報酬額は日本人と同等額以上であることが、受け入れ機関として認められる基準となっています。直接雇用が原則ですが、業種によって派遣契約の雇用形態も可能です。
「登録支援機関」の役割と登録の流れ
「登録支援機関」の役割と登録の流れについて解説します。
「登録支援機関」の役割
「登録支援機関」において、「特定技能1号外国人に対しては,本邦での活動を安定的・円滑に行うことができるようにするための日常生活上,職業生活上又は社会生活上の支援を行う 」ことが、重要な役割です。
(引用 法務省 新たな外国人材の受入れに関する 在留資格「特定技能」の創設について)
役割を果たすためには、専門的で幅広い知識・情報が必要となります。業種・職種によって、または就労・居住をする地域によっても、それぞれの特徴があるため、「登録支援機関」が巧みに対応できるか否かが、手腕を問われることになるでしょう。
「特定技能所属機関」とは、委託を受ける関係性です。上下関係ではなく、互いに対等な立場で、外国人を支援していくことが大切です。
目的を一致させ、役割をそれぞれが理解して、認識を共有させておかなければなりません。
「特定技能所属機関」は外国人労働者の支援をする以外にも、悪質な仲介業者の排除に関わる予定です。外国人の受け入れを担うとともに、積極的に関わる見通しです。
人権保護の観点からも、外国人を保護するために、規制などによる対策が急がれています。
「登録支援機関」になるためには?
「登録支援機関」
「登録支援機関」になるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
○ 支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任していること
○ 以下のいずれかに該当すること ・ 登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に中長期在留者(就労資格に限る。)の受入れ実績があること
○ 外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していること。
○ 1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させていないこと
○ 支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと
○ 5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行っていないこと
(引用 法務省入国管理局 登録支援機関向け)
在留管理や雇用管理に精通した専門機関として、外国人材を支援するためのノウハウや仕組みを整えている必要があります。
申請は、地方出入国在留管理局又は地方出入国在留管理局支局に、登録支援機関登録申請書などの必要書類を提出して行います。
まとめ
特定技能における「登録支援機関」について、基本となる内容を説明しました。
特定技能は技能実習と、「登録支援機関」は「特定技能所属機関」を比較しながら見ると、理解がしやすくなります。
今後、どのように特定技能が活かされ、「登録支援機関」は役割を果たしていくのか、引き続き動向を追いかけていきましょう。