特定技能外国人とは?
近年の日本は人手不足に悩まされる業種・職種が多く、業界によっては地方自治体や国が人材確保のために養成施設の学費など補助金を設けているほどです。各企業が人手不足を解消する手段のひとつとして、「特定技能外国人」の採用があげられます。
特定技能外国人とは、特定の分野に関する一定の専門性や技能を有する外国人のことです。人手不足の企業が海外から労働力を得るための制度ですが、現時点で受け入れを許可されているのは14種からなる特定産業分野のみとなっています。
各業界で受け入れられる外国人に対して与えられるのが、2019年4月に新たに追加された「特定技能」の在留資格です。特定技能は高度専門職や技能実習など全29種が指定されており、以下のとおり更に大まかに1号・2号に分けられています。
1号特定技能外国人
1号に分類される在留資格は、『特定産業分野に属する、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務へ従事する外国人』と定められています。技能に関する具体的な水準は、特段の育成や訓練を受けることなく業務を行えることです。
技能水準の他にも、以下のようにさまざまな条件が定められています。
特定産業分野(就労できる産業分野) | 介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連作業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の特定産業分野に該当する14種 |
在留可能な期間 | 1年間~上限5年間
(6か月または4か月ごとの更新) |
技能水準 | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 試験等で確認 |
家族の帯同可否 | 基本的に不可 |
支援の有無 | 受け入れ機関または登録支援機関の支援の対象となる |
上記14種の特定産業分野に該当する在留者資格を得た場合、1号特定技能外国人と呼びます。彼らが日本で生活するうえで、快適に労働や生活できるように受け入れ機関や登録支援機関による各種支援が行われます。
具体的な内容はたとえば以下のようなものです。
・住居の賃貸借契約に関する保証人となる
・その他住居の確保に関する支援
・金融機関での預金口座開設の支援
・携帯電話など生活上欠かせない契約関連の支援
1号特定技能外国人は、同一の業種区分内に属する仕事あるいは技能水準の共通性が認められる業務区分の仕事であれば、転職することもできます。ただし、技能水準の共通性を理由に転職する場合は、試験によって証明しなくてはなりません。
また、転職を検討している場合は期限にも注意すべきです。退職から3ヶ月経過しても特定技能に該当する活動を行っていないと判断された1号特定技能外国人は、正当な理由がある場合を除いて在留資格が取り消される可能性があります。
2号特定技能外国人
1号特定技能外国人よりも、更に対象者が限定されるのが2号特定技能外国人です。1号であげた14種の特定産業のうち、『2分野に属している熟練した技能を要する業務に従事する外国人』を対象に在留資格が与えられます。
1号のケースと同様に、以下のとおり複数の条件が定められています。
特定産業分野(就労できる産業分野) | 造船・舶用工業、建設業(14種のうちの2分野) |
在留可能な期間 | 3年間
(1か月または6か月ごとに更新) |
技能水準 | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 確認は不要 |
家族の帯同可否 | 要件を満たすことで配偶者・子に限り可能 |
支援の有無 | 無(対象外) |
在留期間は3年となっていますが1号のように上限が定められておらず、条件を満たすことで期間延長や永住申請もできることが最大の特徴です。
日本での就労を希望する外国人は、まず1号特定技能外国人の在留資格を得ます。その後、該当する業種(造船・舶用工業、建設業)で試験に合格したもののみが2号特定技能外国人の在留資格を得る仕組みです。
2号特定技能外国人も、同一の業種区分内に属する仕事あるいは試験によって技能水準の共通性が認められた仕事に限り、転職が可能です。こちらも正当な理由がない限り、3か月以内に転職もしくは特定技能に該当する活動を行っていなければ在留資格取り消しとなるおそれがあります。
特定技能外国人に必要な日本語力
前述の表で分かるように、1号特定技能外国人は就労および在留資格の取得に一定水準の日本語力が必須です。2号は1号の在留資格を取得したときに試験である程度の日本語力があることを証明できているため、免除されます。
能力を証明するためには、以下のうちいずれかの日本語関連の試験に合格しなくてはなりません。自社ではなく第三者の実施する試験に合格することで、偏りなく一定水準が満たされていると客観的に証明されます。
・日本語能力試験
・国際交流基金日本語基礎テスト
上記のどちらに合格しても良い点は、すべての産業分野で共通していますが、介護分野のみ更に条件が加えられます。介護分野に就労する外国人に対しては、「日本語能力試験」もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト」に加えて、「介護日本語評価試験」での合格も必要です。
そのため、受け入れ機関(企業)は、選考スケジュールを技能試験および日本語能力試験を加味して計画しなくてはならない点に注意してください。
日本語能力試験
日本語能力試験は、1984年より開始された歴史ある試験です。設問は言語知識(文字・語彙・文法)・読解・聴解の3つの要素から作成されており、理解度や日常での活用力など、課題遂行のためのコミュニケーション能力が問われます。
より正確に受験者の日本語能力をはかるために、通常の試験で行われている素点(1問ずつ分配された点数を合計する方式)ではなく尺度得点による採点です。
日本語能力試験は5段階(N1~N5)のレベルが設けられています。1号特定技能外国人に求められる能力の目安はN4以上の合格と定められており、基本的な日本語が理解できる程度のレベルです。
相手にゆっくりと話してもらうことで、会話のほとんどを理解でき、基本的な漢字や語彙を使用した文章であれば読むこともできます。
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テストは通称「JFT-Basic」とも呼ばれる、2019年より開始されたもうひとつの日本語能力試験です。基本的に日本語を母国語としない外国人であれば受験できる試験ですが、国ごとに細かく条件が異なるため、各国の受験希望者は事前に確認する必要があります。
大きな特徴は、特定技能向けに特化している基礎テストとして構成されている点です。国内実施はもちろん国外でも実施するなどニーズによって使い分けられており、前回の試験で不合格となった場合も30日の間隔を開けることで再度受験が認められます。
日本語能力試験が幅広いシーンでの日本語コミュニケーション能力をはかるのに対し、国際交流基金日本語基礎テストは日本国内での生活のみを想定して能力をはかります。そのためレベル分けは行わず、評価されるのはある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力の有無についてのみです。
まとめ
特定技能外国人の在留資格を利用した就労は、国によって認められている14の特定産業に該当する業務のみです。そのためすべての業種・職種で採用できるわけではありませんが、製造業やサービス業、飲食業など幅広い分野が組み込まれているため、多くの企業が採用を検討できます。
取得できる在留資格は1号2号に大まかに分けることができ、大半の業界が1号特定技能外国人を受け入れることとなります。実技試験の他に日本語力を問う試験にも合格している必要があり、選考担当者も簡単なやり取りであれば日本語で行うことができるでしょう。
ただし、合格した試験によって日本語能力が異なることを理解したうえで選考を進める必要があります。