特定技能の外国人!飲食店の人手不足を解消
外国人労働者は飲食店にとって、価値ある労働力となりうるでしょうか?まずは現状をまとめてみましょう。
ますます増えていく外国人労働者の需要
どの業界の経営者にとっても人材確保は頭を悩ませる問題ですが、中でも外食業の求人状況は厳しいようです。
平成29年度の外食業の有効求人倍率は「飲食店主・店長」が12.68倍、次いで「飲食物給仕係」が7.16倍、そして「調理人」が3.44倍というデータがあります。
(参考サイト「外食業分野における特定技能の在留資格に掛る制度の運用に関する方針」より)
全産業の有効求人倍率が1.54倍であることからしても、外食業における人材不足は突出していることがわかりますね。
効率的なオペレーション方法など様々な工夫をされているとは思いますが、今後も状況は改善されそうになく、このままでは営業時間の短縮や店舗閉鎖などを考えざるを得ない状況になるでしょう。
もうすでに、店内のスタッフ数が少ないことでミスが発生したり、お客様への十分なフォローができなかったり、といったことでお悩みの方は多いのではないでしょうか。
そこで必要になってくるのが、一定以上の能力を持つ外国人労働者の受け入れです。外国人労働者の雇用となると、コミュニケーション面や生活習慣面などで不安に感じるかもしれません。ですが、「特定技能」を取得している外国人は、日本語能力に関する一定の評価水準をクリアしており、優秀な人材といえるのです。
外食業における特定技能の基本
今までは外国人が日本で働くためには、学歴や職歴に高い要件があり、単純労働には従事できない仕組みになっていました。
しかし、深刻な人材不足を受け、2019年4月に新たな在留資格である「特定技能」がスタート。特定技能1号には介護、農業、宿泊業などとともに外食業も含まれており、2号は建設業、造船舶用工業の業種が対象です。
外国人が特定技能1号として働くためには、技能試験と日本語試験の両方に合格しなくてはなりません。それぞれの業界ごとに技能試験がありますが、外食業の場合であれば、「外食業技能測定試験」の合格が必要となります。
試験内容は、衛生管理、飲食物調理、接客全般の項目から出題され、合格者は外食業で必要とされる基礎知識を有していると判断できるでしょう。試験内容などの詳細については法務省の資料をご確認いただくのがよいと思います。
特定技能の活用方法とメリット
では特定技能1号の外国人が就業できる具体的な業務と、メリットについてご説明いたします。
特定技能で就業できる仕事先
特定技能1号の外国人労働者を雇用する事業者は、日本標準産業運類における「飲食店」もしくは「持ち帰り・配達飲食サービス業」に分類される事業所に就労させる必要があります。
「食堂」「レストラン」「ファーストフード店」「テイクアウト専門店」などがこれにあたります。従事できる業務区分は、「飲食物調理」「接客」「店舗管理」「その他外食業全般」などです。
ですから、「接待飲食等営業」にあたる営業所で就労させることはできません。また、業務内容が「飲食物調理」「接客」「店舗管理」であったとしても、同営業所において就労させることはできませんのでご注意ください。
特定技能を持つ外国人労働者のメリット
では特定技能を持つ外国人の優位性はどんなところでしょうか?日本で働く外国人ときいて、技能実習生をイメージされる方も多いと思います。
技能実習制度は、「日本で技能や知識を学び、祖国に持ち帰って経済発展に寄与してもらう」のがそもそもの趣旨で、労働者としての扱いではありません。
技能実習生には、来日時点で求められる技術水準はありませんが、特定技能外国人に関しては、該当分野に一定以上の知識や技術があります。
また、日本語の試験も取得しているため、言語のコミュニケーション面で大きな問題になることも少ないでしょう。
在留期間も通算で5年までとなるため、長期的に働いてもらうことが期待できます。
外国人が職場に加わることにより、予想外のメリットがあったというご意見もお聞きします。今まで日本人だけでは気がつかなかった新しいアイデアが生まれたり、マンネリ気味だったムードが変わり、従業員のモチベーションが上がったり、ということもあるようです。
企業側の対応と制度活用の注意点
特定技能外国人の技術水準についてはおわかりいただけたと思いますが、では受け入れ側には基準があるのか、またどのような対応が必要なのかを解説いたします。
特定技能の外国人を雇うには?
特定技能を持つ外国人を雇用するためには、企業側にも満たすべき基準があります。
・企業自身が法令を遵守しているか、外国人に不利な条件や環境はないか、などの要件を満たしていなければなりません。
・法務省が定める基準に適合する支援計画に基づいて、外国人労働者を支援しなければなりません。日本で労働するにあたって留意すべき点をわかる言語で説明することや、住居探しなど生活におけるサポートなども含まれます。
・基準に適した雇用契約を結ぶ必要があり、その中では報酬額が日本人と同等以上であることや、外国人であることを理由に福利厚生面で差別しないこと、などを明記する必要があります。
・外食業のみで求められる条件としては、風営法で規定されている「接待飲食等営業」を営む営業所で働かせないことや、「接待」を行わせないこと、などの条件もあります。
特定技能の外国人雇用に関する注意点
特定技能の新設にあたって、外国人雇用のハードルが下がったようにも思えますが、すべての手続きを日本人と同様に扱えばよいかというと、そうではありません。外国人雇用ならではの注意点もあります。
・先ほども述べたとおり、風営法に該当する業種で就労させることはできません。ガールズバーやキャバクラなどで接客させることはできませんし、業務内容が調理であってもそのような営業所で就労すること自体も認められません。
・受け入れ企業は農林水産省、関係業界団体などで構成される「食品産業特定技能協議会」の構成員になる必要があります。業界ごとに同様の協議会があり、特定技能外国人の適正な受け入れを目指し、情報を共有するための組織です。
・外国人が日本社会に溶け込み、円滑に生活を送れるように支援する義務があります。具体的には支援計画を作成し、その通り実施しなければならないということ。また、来日時の空港への送迎や行政手続きなども、企業側がサポートする必要があります。この支援業務については「登録支援機関」に委託することが可能ですので、自社ですべて行うのは負担が大きいという企業は、はやめに支援機関に相談するのがよいでしょう。
外国人を雇用するにあたっては、相互理解がなによりも重要です。風習や生活習慣、価値観が違って当然という考えを前提に、採用活動にあたりましょう。
お互いのよい部分を取り入れて、外国人にとっても働きやすい職場環境を整えていくことができれば、今後ますます多様化が進む社会の中で、選ばれる企業に成長することができるはずです。
まとめ
今回は特定技能外国人の採用について解説いたしました。現在の人手不足は待ったなしの状況です。スタートして間もない制度をぜひ積極的に利用して、優秀な外国人人材の採用につなげていただければと思います。