介護分野に特定技能外国人を!基本情報からメリット・デメリットまで

外国人が日本で働くにあたり、あらたな残留資格として「特定技能」が2019年4月より追加され、職業の枠が広がりました。人材不足がますます深刻化している介護分野において、特定技能外国人の受け入れは絶大なものです。 実際に制度の利用を考えたとき、残留資格の「特定技能」とは「どのような仕組みになっているのか」また、「外国人人材を受け入れるにはどうすればよいのか」気になるところです。 ここでは、残留資格「特定技能」について基本情報からメリットなどをお伝えします。

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介護分野に特定技能外国人が必要なわけ

介護分野では、有効求人倍率の上昇が続いています。有効求人倍率は数値が高いほど「人材を必要としている企業が多い」という見方ができ、いわば「人材が不足している」という状況を指します。

専門的な知識が必要とする介護分野に、特定技能外国人が必要とする理由を見ていきましょう。

介護の人材不足

介護分野の人材不足は深刻です。顕著にそのことが見て取れるのが、冒頭で述べた有効求人倍率の数値です。

・高齢者の増加も原因となっている

介護分野の有効求人倍率は、地域ごとに大きな差異があります。もともとの人口差と高齢化の状況が異なることが理由です。東京では5.40倍、愛知県では5.30倍、次いで富山県で4.37倍という数字となっています。全国平均では、3.15倍となっています。(2017年(平成29年)5月の資料)

(参照:厚生労働省・介護人材確保対策 (参考資料))

・介護業界の人材獲得競争が激しい

介護保険制度の施行後、要支援・要介護の認定者数は増加しているため、サービスの対応に居して介護職員も2000年(平成12年)度から2015年(平成27年)度の15年間で約3.3倍に増加しています。

しかし、介護分野においては人材獲得競争が激しい現状は、一向に変わらないとされています。また、介護現場で課せられる業務内容と比較して、給与体系が合致しないことから離職率も高いのが業界の特徴であるといわれています。

さらに、2024年までに約30万人の介護職者が不足すると予測されています。このような、人手不足問題を少しでも緩和していくために、14の業種で特定技能という残留資格が新設されました。

(参照:厚生労働省・介護人材確保対策 (参考資料))

特定技能外国人が必要

特定技能外国人とは、「国内だけでは人材が確保できない分野で外国人を雇う在留資格」のことです。

特定分野が定められている 14業種は以下のとおりです。

1 介護分野

2 ビルクリーニング分野

3 素形材産業分野

4 産業機械製造業分野

5 電気・電子情報関連産業分野

6 建設分野

7 造船・舶用工業分野

8 自動車整備分野

9 航空分野

10 宿泊分野

11 農業分野

12 漁業分野

13 飲食料品製造業分野

14 外食業分野

また、特定技能には特定技能1号と2号で分けられます。

上述した「14の業種相当程度の知識又は経験を必要とする技能と認められる業務に、従事することができる」のが「特定技能1号」。

対して特定技能2号とは「建設業、造船・舶用工業の2つの業種が対象」となり、家族滞在や残留期間更新が可能となります。

○特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの残留資格

○特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの残留資格

(引用:厚生労働省・新たな在留資格「特定技能」について 制度概要(1)残留資格について)

特定技能1号での就労は、通算5年に限定されています。現状においては、介護業は滞在に期限のない特定技能2号ではなく特定技能1号に該当するため、残留期間などにおいては注意が必要です。

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介護業界で特定技能外国人を雇うのは不安?

外国人を雇用するにあたり、もっとも懸念されるのは言葉の壁です。そのため、人手不足であっても外国人を雇用するに踏み切れない企業も少なくありません。

介護分野の特定技能1号の要件

介護分野の特定技能1号の要件を満たすための基準には、決められた試験(技能試験・日本語試験・介護日本語評価試験など)があります。

介護分野の特定技能1号の資格を取得するには、いずれかの要件を満たさなければなりません。

・技能試験

○試験言語:現地語

○実施主体:予算成立後に厚生労働省が選定した民間事業者

○実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式 ○実施回数:国外:年おおむね6回程度国内:未定

○開始時期:平成31 年4月予定

※介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、 利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度 実践できるレベル

・日本語試験

○実施主体:独立行政法人国際交流基金

○実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式 ○実施回数:年おおむね6回程度、国外実施を予定

○開始時期:平成31 年4月から活用予定

※ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度 の能力(※)

※※業種横断で求められる日本語能力の基本的な水準:「特定技能の在留 資格に係る制度の運用に関する基本方針」(2018年(平成30年)12月25日閣議決定)

・介護日本語評価試験

○実施主体:予算成立後に厚生労働省が選定した民間事業者

○実施方法:コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式 ○実施回数:国外:年おおむね6回程度国内:未定

○開始時期:平成31 年4月予定

※介護現場で介護業務に従事する上で支障のない程 度の水準の日本語能力

(引用:厚生労働省・新たな在留資格「特定技能」について 技能試験・日本語試験の概要 (介護分野における分野別運用要領))

メリットが多い理由

特定技能外国人を介護職員として雇い入れることに対して、考えられるメリットは多くあります。

・人手不足が解消される

少子高齢化が進んでいくなか、このままでは高齢者が増加していくことは明らかです。高齢者の生活をサポートする次世代の若者が減少している日本では、優先的に考えなくてはならない問題です。

そのような状況下で、介護職員として特定技能外国人の雇用が増えれば、人手不足が解消されていくと考えられます。

・職場の活性化にも繋がる
人手が増えるということは、利用者に対して「充実したサービスやケアを行うことができる」ことへ直結していきます。

利用者、介護職員が共に増えていくことで、介護施設は受け入れ態勢を整備していくことに注力しなくてはなりません。強いては、職場の活性化にも繋がることが期待できます。

・モチベーションが高く真面目な人が多い
海外から日本へ働きに来る人は、モチベーションが高くまじめな人が多いものです。特定技能外国人は、バカンスではなく「技術習得」や「働くこと」が目的で、日本での生活を志願しているため、大変勤勉であることはいうまでもありません。
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特定技能外国人を介護業界で受け入れるために

特定技能外国人を介護業界で受け入れるためには、その流れを理解しておく必要があります。

受け入れの流れ

特定技能外国人としての要件を満たすために、試験に合格する必要があります。用件を満たして初めて入国が可能となるのです。

日本で働きたい外国人が要件を満たした状態で、「出入国在留管理庁」へ届出を行います。
その際、「出入国在留管理庁」は特定技能外国人に指導や助言を行います。

実際に、日本で働くには特定技能外国人は、各機関と契約を結ぶ必要があります。特定技能の制度には、以下の2つの機関があります。

○特定技能所属機関:特定技能外国人を雇用する会社(受け入れ機関)
※雇用契約を結び、特定技能外国人の職場となる

○登録支援機関:特定技能外国人の職場上、日常生活上、社会上の支援を行う機関
※支援体制が整っている業界団体や民間法人などが支援機関となる

「受け入れ機関」「登録支援機関」ともに「出入国在留管理庁」へ状況の届出を行います。
それぞれが「出入国在留管理庁」から指導や助言があります。

登録や契約手続きが完了した段階で、介護施設などでの就労がスタートします。

上述したとおり、特定技能1号については、5年で満期となり、就労契約が終了すれば母国へ帰国。対して、特定技能2号は、状況に応じて残留期間更新が可能となっています。

(参照:厚生労働省・新たな在留資格「特定技能」について 制度概要(2)受入れ期間と登録支援機関について)

受け入れる環境を整える

特定技能外国人を受け入れることが決まれば、速やかに職場の環境を整える必要があります。

・利用者の不安を解消
特定技能外国人当人への気遣いも必要ですが、何よりも利用者の不安を解消する必要があります。受け入れが始まる前に、あらかじめ施設の方針や理念などをわかりやすく利用者に伝えて理解を得られるようにしましょう。

・宗教、文化の違いに配慮
国が違えば、宗教や文化の違いがあります。思い込みや先入観は捨てて、互いの国のことを理解し合うようにすることが、コミュニケーションを図るうえで重要になります。

・丁寧でわかりやすい説明を
指導者側がわかっていることでも、特定技能外国人にとっては初めて見聞きすることも多いはずです。教えすぎて「過ぎる」ことはありません。丁寧でわかりやすい説明を心がけたいものです。

まとめ

労働人口が減少している日本において、介護分野をはじめさまざまな業界においても「外国人労働者の力は必要不可欠である」といってもよいでしょう。

試験に合格して日本へ働きにくる外国人は、やる気があり優秀な人が多くいます。企業は、制度を有効活用して、今後の事業反映に役立ててみてはいかがでしょうか。