特定技能外国人自動車整備士が必要な理由
2019年4月に新たな在留資格として設けられた特定技能。特定技能は、それぞれの省庁が人手不足と認めた業種に外国人労働者の就労が認められる在留資格です。
特定技能で就労できる業種は14種あり、自動車整備業もそのひとつです。なぜ自動車整備業は、特定技能で就労が認められる業種として指定されているのでしょうか。
自動車整備業において、特定技能外国人の自動車整備士が求められている理由を見ていきましょう。
慢性的な自動車整備士不足
かつて、子どもたちの憧れの職業として人気があった自動車整備士ですが、年々その数が減少しています。平成26年度には34万2,486人いた自動車整備士は、平成31年度には33万6,897人と、5,589人も減少しているのです。
出典:自動車特定整備業実態調査結果概要(日本自動車整備振興会連合会)
自動車整備要因の有効求人倍率も平成23年度から右肩上がりに上昇しており、平成29年度には3.73倍となっています。全職種の有効求人倍率は1.54倍ですので、自動車整備士の人手不足が深刻な問題となっていることがわかります。
なぜ、これほどまでに自動車整備士の数は減少しているのでしょうか。その原因は若者の車離れにあるようです。
若者の車離れの風潮
20代から30代の若者を中心に、車を持たない人たちが増えています。現代の若者が車を持たない理由としては、車を持つ必要性を感じない、購入費用や維持費が高い、職種の変化などさまざまです。
車を持つ必要性を感じない理由としては、インターネットの普及によって若者の趣味や価値観が多様化したからと考えられています。
また、非正規労働者の増加の影響もあり、都会に住む若者だけでなく、生活のために車を必要とする地方の若者の中にも、車を所有できない層が増えているのです。
車を持たない若者が増えたということは、車に乗ってドライブしたり車をいじったりする若者が減少しているということです。
実際に自動車整備士を養成する大学や専門学校では入学者が激減しており、若者の車離れが自動車整備士不足へとつながっていることがわかります。
平均年齢の上昇
自動車整備士を目指す若者が減少しているため、自動車整備士の平均年齢が上昇しています。平成30年度には自動車整備士の平均年齢45.3歳になっており、自動車整備士の高齢化が進んでいるのです。
この先、新しい人材が入らない状態で多くの整備士が定年退職を迎えてしまうと、自動車整備業の人手不足はさらに深刻な問題になってしまうでしょう。
このような背景から、自動車整備業では慢性的な人手不足に陥っており、この問題を解決するために特定技能外国人の雇用が求められているのです。
特定技能外国人を受け入れる条件
人手不足の解消として期待されている特定技能外国人。では、特定技能外国人を雇用するためには、企業としてどのような条件が必要なのでしょうか。
地方運輸局長の認証を受けていること
企業は特定技能外国人を受け入れるまでに、道路運送車両法第78条第1項に基づく、地方運輸局長の認証を受けなければなりません。
自動車整備分野特定技能協議会への入会
特定技能外国人を適切に受け入れるために、「自動車整備分野特定技能協議会」に入会する必要があります。
また「自動車整備分野特定技能協議会」入会した上で、必要な協力を行うことも特定技能外国人を雇用するための条件となっています。
直接雇用
特定技能外国人の雇用形態は正社員のみとなり、パートや派遣での雇用はできません。
特定技能外国人にも条件がある
もちろん、日本の企業で働くためには外国人労働者側にも条件があります。
特定技能「自動車整備」で在留資格を得るためには、以下の試験に合格しなければなりません。
・国際交流基金日本語基礎テスト、もしくは日本語能力試験 N4以上
・特定技能評価試験、もしくは自動車整備士3級
また、技能実習2号、または3号を修了した方は、日本語試験と技能試験を受けなくとも特定技能への移行が可能になります。
特定技能外国人受け入れ上の注意点
特定技能外国人を受け入れる条件意外にも、受け入れの際に注意しなければならないポイントが5つあります。
費用
特定技能外国人を雇用する場合、支援費用や海外現地から外国人労働者を送り出してくれる機関に支払うための費用がかかります。
そのほかにも、特定技能外国人を雇用するために作成しなければならない書類が100枚以上になるため、自社での作成が難しい場合は委託企業へ依頼するため、その費用もかかるでしょう。
さらに、特定技能外国人への給与は日本人労働者と同額以上である必要があるため、人件費もかかります。
外国人労働者だからといって、安い費用で雇用ができるわけではないことを覚えておきましょう。
出入国の法令順守
在留資格「特定技能」を取得した外国人であっても、出入国に関わる法令は順守しなければなりません。
順守しなければいけない法令としては、以下のようなものがあります。
・有効な旅券を所持していること
・上陸許可証印や上陸許可を受けること
・在留資格の活動以外で収入を得られる活動をしないこと
・在留期間の更新を希望する場合は適切な申請を行うこと
上記の法令に違反すると、企業側も罰せられる可能性があります。そのため、雇用する特定技能外国人労働者の所持する旅券が有効か、在留期間の更新が正しく行われているかを定期的にチェックしましょう。
社会保険に関する法令
特定技能外国人を受け入れる際に、社会保険に関する保険料の納付状況を確認書類の提出が必須となっています。
つまり、社会保険に加入し、労働関連の法令を順守している企業でなければ、特定技能外国人の受け入れはできません。
雇用契約の締結
雇用する特定技能外国人労働者と企業は、雇用契約を結ぶ必要があります。
特定技能外国人と結ぶ雇用契約は「特定技能雇用契約」と呼ばれ、日本人と結ぶ雇用契約と同様の内容であることが求められています。さらに、入管法の規定事項にも対応しなければなりません。
特定技能1の支援が必須
自動車整備士の特定技能は特定技能1号に該当するため、受け入れ先の企業は、特定技能1号人材が仕事面だけでなく生活面でも問題なく過ごせるように、支援をしなければなりません。
具体的な支援内容は、以下のとおりです。
1.入国前の生活ガイダンスの実施
2.入国時の空港等への出迎え、帰国時の空港等への見送り
3.住宅を借りる際の保証人となること
4.生活オリエンテーションの実施
5.日本語習得の支援
6.特定技能外国人からの相談、苦情への対応
7.各種行政手続きに関する情報提供と支援
8.日本人との交流の機会を作る
9.特定技能外国人の雇用が解除された場合の再就職支援
受け入れ先の企業で支援が難しい場合は、「登録支援機関」に委託することも可能です。ただし、委託業者によっても対応が異なりますので、特定技能外国人に寄り添った対応をしてくれる業者を選びましょう。
まとめ
自動車整備業で特定技能外国人の自動車整備士が求められている理由や、特定技能外国人を受け入れるための方法などを詳しく解説してきました。
自動車整備士不足は今後ますます加速することが予想されており、一刻も早い対応が求められています。特定技能外国人を雇用するためには、いくつかの条件が必要ですが、人手不足に悩む企業の心強いパートナーとなってくれるはずです。
ぜひこの記事を参考にして、特定技能外国人の受け入れを検討してみてはいかがでしょうか。