特定技能外国人を雇用するなら知っておこう!二国間協定について

日本国内の人材不足を解消するために、2019年4月より創設された制度、特定技能。新在留資格として注目されている中で、二国間協定を送り出し国と締結する動きが起きています。 二国間協定は外国人を滞りなく送り出し、受け入れるために重要な協力覚書です。特定技能においては、どのような役割を具体的に担っているのでしょうか。 ここでは二国間協定に関する説明をしながら、二国間協定によってもたらされる変化について解説します。

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特定技能の二国間協定とは


特定技能を活かして、外国人就労の受け入れを拡大する動きが盛んになってきています。

その1つが、外国人労働者の雇用を巡って、諸外国と結ぶ二国間協定です。二国間協定に関する目的と、現時点で締結している関係国の状況を確認して行きましょう。

二国間協定の目的

二国間協定は、送り出し国との協力覚書によって締結されます。

二国間協定を取り決める目的は、特定技能外国人を円滑、かつ適正に送出し・受け入れをするためです。特に、悪質なブローカーを徹底的に排除する役割が期待されています。

これまで外国人労働者に多額の借金をさせて、不適切な保証金や手数料を徴収する仲介業者が横行していました。二国間協定によって実施されたのは違法な行為の取り締まり、規制の強化です。

また、人権侵害行為や偽変造文書の行使などの情報共有が、速やかに行われるようにもなりました。

しかし、仲介業者による手口は極めて巧妙です。二国間による連携体制によって、どこまで仲介業者を抑止・摘発できるのか、その効果はまだ明確ではありません。

さらに特定技能外国人が日本国内で就労する際に生じる諸問題を解決することも、二国間協定の目的として設けられています。

二国間協定を結んでいる国

二国間協定を締結する諸外国は、特定技能外国人の送り出し国で、日本語試験を実施する予定の9か国(フィリピン、ネパール、カンボジア、ミャンマー、モンゴル、インドネシア、ベトナム、中国、タイ)が対象とされています。

制度の施行に合わせて、本来は2019年3月までに、9か国との二国間協定を結ぶ予定でした。しかし同月までに、署名を済ませたのはフィリピン、ネパール、カンボジア、ミャンマーのみ。モンゴルとは、翌月に協力覚書を締結しました。

インドネシア、ベトナム、中国、タイに関しては、まだ取決めには至っていません。悪質な仲介業者を一掃できる条例が整備されていないことが、遅れている理由として挙げられます。

二国間協定を結んでいない場合でも、日本側の事業者は特定技能外国人を受け入れることが可能です。しかし受け入れ国での技能試験が実施できません。特に受け入れ人数の多いベトナムと中国では、このような制限によって労働者の雇用に影響を及ぼすと考えられています。

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二国間協定が重視される背景

外国人労働者を受け入れるために締結が急務ながらも、当初の予定より遅れをとっている二国間協定。なぜ特定技能において二国間協定が重要視されているのでしょうか。その背景を、2つの視点から解説します。

出国をするときに借金を負ってしまう

悪質ブローカーが介在した場合、外国人労働者は借金をして日本で就労を始めるリスクがあります。これは実際にこれまで活用されていた技能実習制度において、問題視されてきたことです。

技能実習生に、渡航前費用として多額の債務を背負わせる事態が発生しました。債務の大半は、不当な仲介手数料や保険料です。借金を返済しなければ、母国へ戻れないという苦境に追い込まれた外国人労働者も少なくありません。

出稼ぎをするために日本へ訪れたにも関わらず、返せないほどの債務を抱えてしまっては、外国人労働者にとって、徒労で終わります。

もし職場を辞めれば、技能実習生は母国へと強制送還となります。借金を完済できないまま、帰国をした場合は、家族や親族にも迷惑をかけることになるでしょう。

このような事態をなくすために、技能実習制度では二国間協定が締結されました。特定技能においても、協力覚書の取り決めが急務となっています。

最悪の場合失踪することも

また、仲介業者によって紹介された就労先で、劣悪な労働環境を強いられることがあります。

最低賃金以下の報酬や過度な残業、さらに重労働など。不法就労につながる恐れが、過去に起こったケースから想定されます。実際に、これらの違法状態だけでは、賃金の未払いや外国人労働者に対する暴力、セクシャルハラスメント、いじめ、不当な解雇といった問題が後を絶ちません。

このような問題に耐えかねて、技能実習生が失踪する事件が起きています。

法務省の調査では、実習先から失踪した外国人技能実習生は5,218人に達していることが報告されています。うち最低賃金を下回るような不正行為を受けていた疑いがあるのは、759人です。

(参照:法務省 調査・検討結果報告書

技能実習生の失踪者は、年々増加しています。より高額賃金が得られる職場を求めて失踪する外国人労働者もいますが、いずれにせよ失踪した場合は不当就労者という扱いを受けます。

外国人労働者を違法行為に追い込むような現状を見直さなければなりません。技能実習はもちろん、特定技能でも、不法就労という犯罪を撲滅するために、不正を許さない制度を設ける必要性があるでしょう。

法的な整備をすることで、悪質な仲介業者を一掃できます。そのために二国間協定を締結することが求められています。

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二国間協定によって何が変わる?

借金問題や不当就労を回避するために、特定技能における二国間協定の必要性を説きました。続いては、二国間協定がもたらす変化について説明します。

二国間協定を結ぶことによって、悪質な仲介業者の摘発が加速することでしょう。ブローカーを排除することができれば、今までの指摘されてきた多額の借金問題が解消につながります。

さらには、失踪問題や不当就労といった負の連鎖を止めることも可能です。外国人労働者の人権保護を、日本の警察庁や厚生労働省が協力しながら務められるようになります。

二国間協定の締結が外国人労働者の人権侵害を阻止して、国家を横断した法的な保護を強めていくでしょう。

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今後の特定技能の課題

二国間協定を締結しても、特定技能には課題が残されています。新制度を活かして外国人労働者を雇用するために、受け入れ機関として取り組むべき問題を述べておきます。

もっとも注意を払いたいのは、外国人労働者が安心して就労できる環境を整備することです。日本人労働者と、同レベルの労働条件・環境を提示することが義務化されています。

報酬や労働時間において、明らかな格差を設けることは特定技能の施行ルールにおいて禁止されています。さらに報酬面では最低賃金ではなく、日本人と同額以上の賃金を支払うことがポイントです。

外国人労働者は、日本が抱える深刻な労働問題のはけ口ではありません。特定技能外国人に対して、日本人がやりたくない仕事や望まない労働条件を押し付けるような行為は避けましょう。

また外国人労働者が、日本での生活を快適に送れるように、就業だけでなく生活面での支援を積極的に行う必要があります。例えば空港や港までの送迎、住居の確保、銀行口座・貯蓄口座の解説、携帯電話の利用契約などです。

言語だけではなく、文化や風習など母国との違いにストレスを抱えるケースや、生活に支障をきたすケースも想定されます。外国人からの相談や苦情の対応が求められるでしょう。

公的な登録支援機関や地方公共団体などの力を借りながら、地域一体で外国人労働者をサポートしていくことが理想です。

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まとめ

特定技能における二国間協定の目的や重要性、さらには今後の変化や課題について解説していきました。

最も問題視したことは、悪質な仲介業者による不正行為です。外国人労働者が不当な扱いを受けないために、各国で二国間協定を締結する必要があります。

ブローカーを一掃するだけでは、外国人労働者の雇用問題を解消できません。特定技能においては、地域と連携しながらの就労・生活面の全面的なサポートが求められています。

人手不足を解決したいという日本側の意図だけでなく、諸外国に対する労働者の配慮をしながら、新制度である特定技能を活かしましょう。