農業における特定技能外国人雇用のポイント

近年、少子高齢化が進み労働人口が減少していくなか、多くの業界では、人材不足に悩まされています。農業においても例外ではなく、人材不足が深刻な問題となっています。 そんな中、農業の人材不足を解消する方法として、外国人労働者の雇用が注目されています。ここでは、農業における特定技能外国人雇用について紹介します。

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農業でも特定技能の外国人労働者は雇用できる

近年、外国人労働者の雇用を目的とした「特定技能」という制度が注目を集めています。ここでは、農業と特定技能外国人の関係性についてお伝えします。

若い働き手のいない農家が急増

少子高齢化になると、若い働き手が減っていきます。とくに農業従事者においては、平均年齢が60歳を超えています。高齢になると、体力が低下していきます。農業は肉体労働であるため、高齢化が進むと同時に人手不足も急速に進む可能性があります。

農林水産省の調べでは、平成22年(2010年)では農業就業人口が260.6万人でしたが、平成30年(2018年)の時点で175.3万人と大幅に減少しています。
さらに、平成27年(2015年)から平成30年(2018年)の間での平均年齢は60歳以上となっています。
(参照:農林水産省・農業労働力に関する統計)

これには、少子高齢化などが影響しています。これにより後継者の不足が考えられます。これは「事業が継続できなくなる」ことへ直結していくことから、「深刻な問題」といえるでしょう、

人手不足が進むと、日本国内で作る作物の生産率も下がってしまいます。その結果、日本で消費する農産物は国産ものではなく、輸入食材に頼らざるを得ない状況になっていくことが考えられます。

人手不足の農家を優秀な外国人がサポート

外国人の在留資格「特定技能」とは、日本人の人手不足に悩む14分野「特定産業分野」に限り、外国人を雇用することができる制度です。

在留資格「特定技能」には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、農業は「特定技能1号」の対象となります。

在留資格「特定技能」によって、今後は農業での外国人の雇用が増加する見込みです。外国人の雇用が増加することにより、農業の人手不足問題の解決に大きく貢献すると期待されています。

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特定技能で働いてもらう際のポイント

在留資格「特定技能」で外国人を雇用することは、農業を営む人にとって大きなメリットがあります。ここでは、外国人雇用の「メリット」に加え「留意しておくこと」についても解説します。

メリット

農業が対象となる「特定技能1号」として働く外国人には、「分野別の知識と経験を有し、即戦力として働くこと」が求められます。

判断基準として、「即戦力として働く能力」があるかを確認するための「技能試験」があり、学科試験及び実技試験が実施されます。それぞれの分野ごとに所管省庁が管轄しており、分野別で試験内容も異なります。農業は農林水産省の管轄になるので、試験の日程などの詳細は農林水産省ホームページで公開されます。

また、外国人労働者には「日常生活や仕事をする上で、会話に支障がない程度の日本語能力」が求められます。試験には、「技能試験」とは別に「日本語試験」があります。「日本語試験」では、読解試験とリスニング試験の2種類が実施されます。

外国人が「特定技能1号」として働くには、前述の「技能試験」と「日本語試験」に合格する必要があります。外国人雇用のメリットは、「必要な能力を兼ね備えた人材を雇用することができる」という点です。

留意しておくこと

「特定技能1号」の在留期間は、一定の期間ごとの更新で通算5年までとなります。そのために、後継者として期待することはできません。

また、「技能試験」と「日本語試験」が行われている国は、平成31年(2019年)の時点で以下の9カ国となっています。

・ベトナム
・フィリピン
・カンボジア
・中国
・インドネシア
・タイ
・ミャンマー
・ネパール
・モンゴル

(参照:法務省・特定技能制度施行に向けた準備状況について)

必然的に、「特定技能1号」として雇うことが出来る外国人の国籍は9か国に限定されます。

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実際に特定技能外国人を農業で雇う

実際に特定技能外国人を雇用するには、「雇い主」と「雇われる外国人」に対して細かい規定があります。ここでは「雇用できる事業者の条件」と「雇用対象となる外国人の基準」を説明します。

雇用できる事業者の条件

雇用できる事業者には条件があり、雇用形態によって条件は異なります。雇用形態は「直接雇用」と「派遣形態雇用」の2種類あり、以下の条件が定められています。

1.直接雇用
・「農業特定技能協議会」に入会し、協議会に必要な協力を行うこと
・過去5年以内に労働者を6カ月以上雇用した経験があること

農業分野で外国人材を受け入れる場合に満たすべき基準を満たすことを誓約した文書である「誓約書」を作成し、最寄りの地方出入国在留管理局で受入れの手続を行う際に他の書類とあわせて提出する必要があります。

2.派遣形態雇用
・過去5年以内に労働者を6カ月以上雇用した経験があること
・派遣先責任者講習その他これに準ずる講習を受けた者を派遣先責任者に選任していること

外国人材を派遣事業者から派遣してもらう場合、派遣事業者と労働者派遣契約を結ぶ必要があります。

次に、派遣先の満たすべき基準を満たすことを誓約した文書である「派遣先事業者誓約書」をあらかじめ派遣事業者に提出する必要があります。

(参照:農林水産省・特定技能外国人の受入れが始まりました!)

特定技能による外国人を雇用するには、「特定技能におけるビザの申請」を行う必要があります。より具体的な雇用条件については以下の記事を参照ください。

特定技能外国人を雇用する場合の申請方法を確認しよう

雇用対象となる外国人の基準

農業にて雇用できる外国人は、在留資格「特定技能1号」を取得していることが条件となります。在留資格「特定技能1号」を取得するには、以下の条件を満たす必要があります。

■在留資格「特定技能1号」を取得できる外国人の基準

特定技能1号の在留資格を取得できる可能性がある者は、以下の試験の合格者又は農業分野の第2号技能実習を終了した者

1. 技能試験  「農業技能測定試験(仮称)(耕種農業全般)」
「農業技能測定試験(仮称)(畜産農業全般)」

2. 日本語試験 「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

(引用:ビザの窓口・農業 (法人・農家)における在留資格【特定技能ビザ】の活用方法)

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まとめ

少子高齢化、若者の農家離れが主な原因で農家の事業は人手不足が加速しています。

しかし、在留資格「特定技能1号」制度を使用した外国人を雇用すれば、農業の高齢化による人手不足を解消することができると考えられます。

特定技能外国人を雇用するためには、いくつかの手続きや事前準備があります。あらかじめ、「特定技能」について理解をしておくことで、スムーズに外国人を雇用することができます。

特定技能外国人を雇用して、今後の人手不足に備えておかれてはいかがでしょうか。