決定版!「特定技能」で対象となる14業種をわかりやすく学ぶ

新設された「特定技能」に、世間の関心が集まっています。生産力のアップや人材確保をするために、日本国内の労働力ではカバーしきれず、即戦力となる外国人労働者の受け入れが欠かせないものとなっているからです。 また、「特定技能」で解禁されたのは、介護や建設、外食産業など深刻な人材不足で悩む14業種です。 「特定技能」を活かして、日本の労働問題を抜本的に解決できるのでしょうか。 業種ごとの特徴や活用方法、今後注目される点についても紹介します。

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人材不足の解消が期待される「特定技能」とは


現在の日本において、労働に関する問題が深刻化しています。そのなかのひとつに、人材不足があります。今後の人材不足の解消が期待されている「特定技能」について解説します。

日本における労働問題の現状

日本の労働問題は、どれほどの深刻なのでしょうか。

厚生労働省によれば、平成30年12月の時点で、有効求人倍率は1.63倍だったことが発表されています。バブル期を超える高水準を記録しており、いわゆる売り手市場だといわれています。

(参照 厚生労働省 一般職業紹介状況)

慢性的な労働力の不足で叫んでいるのは、日本経済を支える中小零細企業です。
欠員が継続することによって、さまざまな弊害が起きています。

十分な生産力を保てないことや、既存の従業員における業務量の増加、ハードワークによる職場環境の悪化や定着率の低下などです。

一部の産業では、事業の継続が難しくなっており、危機的状況に陥っているといえます。
この問題を解消するために注目されたのが、日本国内の労働力ではなく、海外の労働力です。

国家レベルで、外国人労働者の受け入れ制度を拡充させて必要があります。

日本政府が着眼点を置いたのは、とくに人手が欠乏する分野で、一定レベルの専門性・技能を有して、かつ即戦力となる外国人労働者を受け入れる新たな在留資格「特定技能」を創設することとなりました。

「特定技能」について

2019年4月から新設される「特定技能」。

法務省では、受け入れる対象者の以下のように定義しています。

・相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能1号」と,同分野に属する熟練した技能を要する 業務に従事する外国人向けの在留資格「特定技能2号」を新設する

・ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の日本語能力を有することが基本

(参照 法務省 新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について)

「特定技能1号」の最長滞在年数は5年と定められており、「特定技能2号」では永住も可能です。 現時点で「特定技能2号」のハードルは高くて、具体的な議論が深まっていない状況です。

「特定技能1号」は、期限が限られていることもあり、即戦力となる受け皿として理解して構わないでしょう。

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「特定技能」に該当する14業種について


「特定技能」に該当する14業種について解説します。

「特定技能」で解禁された14業種を紹介

「特定技能1号」は14業種に解禁され、5年間で最大34万5,000人の受け入れを予定しています。「特定技能2号」では2業種のみに解禁されます。

14業種は以下の通りです。

(1)建設業
(2)造船・舶用工業
(3)自動車整備業
(4)航空業
(5)宿泊業
(6)介護
(7)ビルクリーニング
(8)農業
(9)漁業
(10)飲食料品製造業
(11)外食業
(12)素形材産業
(13)産業機械製造業
(14)電気電子情報関連産業

(参照 新たな外国人受入れについて )

「特定技能2号」では建設業と造船・舶用工業が該当します。

14業種ごとの特徴

今まで外国人労働者を受け入れる制度として、「技能実習」制度が施行されてきました。

「技能実習」は、国際協力・国際貢献の一環として開始された研修制度です。
ベトナムやフィリピン、中国など15カ国のみが対象であり、労働を目的とした雇用や、他者への転職活動はできません。

しかし「特定技能」では、受け入れる国は原則自由。
単純労働も転職も可能となることで、「技能実習」から「特定技能」への移行が行われる予定です。

業種ごとに特徴があるので、明確にしておきましょう。

「技能実習」から「特定技能」への移行と「特定技能2号」の取得も可能な業種は、建設業と造船・舶用工業です。

しかし外食業では「技能実習」から「特定技能」への移行も「特定技能2号」の取得も認められません。さらに宿泊業と外食業では、技能実習2号の対象になっていないことも特徴です。

業種によって「特定技能」の活かし方が変わってきます。簡単に比較をしてみましょう。

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各業種のこれから


各業種のこれからについて解説します。

各業種における活用方法

(1)建設業

建設業では、今まで「技能実習」を終了した外国人を、在留資格「特定活動」によって就労する措置を取ってきました。
「特定技能」への移行と新たな受け入れを、国籍を限定せずに行っています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、建設需要が高まっています。
5年間で予測されている人手不足は21万人。

「特定技能1号」で受け入れを見込んでいる人数は、最大4万人となっています。海外の就業者を雇用しても、欠員状況が解決することは難しいでしょう。人材確保に向けて、早急に準備を整えていくべきです。

(2)介護
14業種のうち、とくに人材が枯渇する分野である「介護」。今後5年間羅30万人の人手不足が予測されています。

今まで「特定活動(EPA)」「介護」「技能実習」といった在留資格で、さまざまなルートから海外の人材を召致してきました。しかし根本的な解決には至っていまえん。

「特定技能1号」でも見込まれる人数は、最大で6万人であるため、今後も厳しい現実が待ち受けています。とくに「特定技能1号」では、在宅介護の業務は対象になっていません。今後、拡大する在宅分野の市場での対策が求められるでしょう。

外国人にとって朗報となる点があります。介護福祉士試験に合格して、登録をすれば、「特定技能1号」から在留資格「介護」への変更ができることです。日本に永住して、介護業界での活躍が可能になります。

ほかにも高齢者が大半を占める農業や、就業時間に週28時間の制限がありフルタイム勤務が可能となった外食産業など、業種によって特徴や活用する上でのポイントは異なります。

共通していることは「特定技能」を活かしても十分な人材の補填にはならないことです。人材確保においては戦略を練らなければなりません。

外国人労働者は本当に集まるのか

14業種ごとに違いはありますが、外国人労働者の採用に成功できるのでしょうか。

2019年4月から技能試験が開始されるのは宿泊業、介護業、外食業の3業種からです。宿泊業では国際業務ビザを取得した外国人など、採用する条件が限られていました。

「特定技能」によって学歴・技能問わず、海外の労働者を直接的に雇用することができます。他業種に先んじて、採用活動に注力することが可能です。

外国人労働者を集めるために、労働環境や雇用条件に注意しなければなりません。日本人の水準を下回る低賃金での契約や、重労働が強いられる場合、外国人材が定着することはないでしょう。法的な問題へと発展する可能性もあります。

採用活動が本格的に開始されるまでに、企業体質を見直しておくべきです。
外国人労働者を雇ったとしても、根本的に労働問題が解消されるわけではありません。離職率が高い企業であれば、海外の労働者に委ねるのではなく、その理由を追求して、対策すべきでしょう。

また雇用契約を結ぶ際も、企業側だけの都合や条件で雇用するのではなく、採用条件をすり合わせて、お互いに納得することも必要です。

3業種以外の業種は、最新情報に目を光らせながら、先行事例を参考にして取り入れることができます。日本の企業で働きたいという外国人労働者が増えることで、会社の評価や生産力を向上させるために、「特定技能」は活かされるべきではないでしょうか。

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まとめ

新しい在留資格「特定技能」について、創設された背景から、資格に該当する14業種の特徴や問題までを解説しました。

一時的な労働力の向上にはつながりますが、受け入れる人数の上限と限定された期間から、労働問題を根本的に改善することは難しいでしょう。

「特定技能」を活かしながらも、労働環境を整えて、企業価値を上げていく努力が求められます。