技能実習から特定技能への移行|条件や準備をはじめる時期

自社の人手不足を解消するために、外国人雇用をはじめている企業が増えています。外国人雇用といえば、技能実習生の受け入れからスタートすることが多いのですが、技能実習は条件を満たすと在留資格「特定技能」に移行でき、さらに雇用を延長することが可能です。 この記事では、技能実習と特定技能の違いと、技能実習から特定技能へ移行するための条件などをわかりやすく解説していきます。

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移行のために知りたい!技能実習と特定技能のちがい

外国人労働者の雇用の足がかりとして、多くの企業が受け入れをはじめている技能実習生。しかし、在留資格である「技能実習」には在留期間が定められているため、実習満了後は母国に帰国しなければなりませんでした。

技能実習生が実習満了後も日本で働けるように新設された在留資格が「特定技能」です。どちらも外国人労働者のための在留資格ではありますが、このふたつにはさまざまな違いがあります。

技能実習と特定技能の違いを見ていきましょう。

技能実習とは

技能実習は、開発途上国の方に日本の技術を取得してもらい、帰国して母国の発展に役立ててもらうという国際貢献を目的としています。

技能実習の在留期間は、これまで最長3年でしたが、2017年の法改正により、実習生と受け入れ先の企業が条件をクリアした場合には2年間の延長が認められ、最長5年まで就労が可能となりました。

技能実習生が就労できる業種や作業内容は法律で決められており、80職種144作業となっています。

技能実習は、日本で習得した技術を母国の発展に役立てることを目的としているため、「就労」ではなく「実習」を主軸としています。そのため、技能実習生の転職は認められていません。

ただし、受け入れ先の企業が倒産した場合や、技能実習2号から3号へ移行する場合のみ、「転籍」が可能となります。

特定技能とは

特定技能は、2019年4月に新設された在留資格です。日本企業の労働力不足を補うことを目的としており、技能実習生が実習満了後に在留資格を移行して在留することもできます。

在留期間は特定技能1号で通算5年、特定技能2号になると在留期間の更新回数に制限がなくなります。ただし、現時点では特定技能2号に進んだ例はなく、2021年より建設業と造船・船用工業にて試験をスタートする予定です。

特定技能1号の外国人労働者が就労できる業種は、日本国内で人手不足が問題となっている14業種に限られています。ただし、特定技能は「就労」を目的とした在留資格であるため、14業種内であれば転職も可能です。

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技能実習から特定技能への移行の条件

では、技能実習から特定技能へ移行するためには、どのような条件をクリアする必要があるのでしょうか。

技能実習2号までを修了した場合、在留資格を特定技能1号に移行できます。ただし、技能実習生全員が特定技能1号に移行できるわけではなく、以下の条件をクリアしなければなりません。

・技能実習2号を良好に修了していること
・技能実習の職種・作業内容が特定技能1号の職種と同じであること

技能実習生ではない外国人が特定技能の在留資格を取得するためには、日本語能力試験と技能検定試験に合格する必要があります。

技能実習2号を良好に修了した技能実習生で、技能実習の内容が特定技能1号の職種と一致した場合のみ、上記の試験が免除され、特定技能1号に移行可能となります。

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技能実習から特定技能への移行可能な業種

技能実習から特定技能への移行可能な業種を紹介します。

特定技能1号は、以下の14業種です。

1 介護
2 ビルクリーニング
3 素形材産業
4 電気・電子情報関連産業
5 建設
6 造船・船用工業
7 自動車整備
8 産業機械製造業
9 航空分野
10 宿泊産業機械製造業
11 農業
12 漁業
13 飲食料品製造業
14 外食業

特定技能2号は、以下の2業種となります。

1 建設
2 造船・船用工業

技能実習の職種と作業内容が、特定技能1号の業種に含まれていない場合は、法務省のホームページにある特定技能の制度説明資料を確認し、移行できるかをチェックしましょう。

出典:新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)

また、現在は2業種のみ移行が許可されている特定技能2号ですが、家族の帯同が認められるほか、在留期間の申請に限度がなくなります。そのため、永住権申請も目指せる可能性も出てくるでしょう。

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移行の準備はいつからはじめる?

技能実習生が特定技能1号に移行するとき、実習先と同じ企業でそのまま就労するケースが多くみられます。

どの企業も人手不足に悩んでいますので、実習生がそのまま企業に残って就労してもらえたら嬉しいですよね。実習生としても、母国に帰国しても仕事に就ける保証はありませんので、このまま日本で働きたいと考えている人も多いでしょう。

しかし、在留資格の移行手続きは時間がかかります。また、申請時期も限られていますので、早めの準備をおすすめします。

では、技能実習生の在留資格をスムーズに移行するためには、いつ頃から準備をはじめると良いのでしょうか。

在留資格の移行申請を行える期限は、技能実習の在留期限までとなっています。万が一、在留期限までに申請ができなかった場合、技能実習生は在留資格がなくなるため、一度母国に帰国しなければなりません。その後、在留資格認定申請として再び日本へ入国します。

特定技能へ移行する申請の流れは、受け入れ先の企業や登録支援期間によって異なりますが、膨大な量の書類を作成し、特定技能1号を受け入れるために社内制度を見直す必要があります。

そのため、申請準備には2~3ヶ月程度かかると考えておいて間違いないでしょう。

もし申請期限までに間に合わないと、実習生は一度帰国しなければなりません。移動の費用が余計にかかるだけでなく、実習生が戻るまでに現場の人手も足りなくなってしまいますので、余裕をもって準備をはじめておくと安心です。

もちろん、技能実習生と企業の双方の意思が一致しなければ在留資格の移行申請は行えませんので、相談する期間も含めて、在留期限の半年くらい前から準備をはじめておいた方が良いでしょう。

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一度帰国した元技能実習生を再雇用できる?

一度帰国した元技能実習生に日本に来てもらい、再雇用することは可能です。

技能実習生が大学を卒業しているならば就労ビザを取得できる場合もありますが、就労ビザの取得は容易ではありません。

元技能実習生が技能実習2号を良好に修了しており、技能実習の職種や作業内容が特定技能1号の職種と合っていれば、特定技能1号の在留資格が取得可能です。

一度帰国した技能実習生が特定技能1号の在留資格を取得するときは「在留資格認定証明書交付申請」を申請します。

外国人を雇用するなら、新しい技能実習生を受け入れる選択肢もありますが、技能実習生を受け入れるための費用は初年度だけでも130万円ほどかかります。仕事も生活面も一から教えなければならないため、元技能実習生を再雇用した方がコストも時間も節約できるでしょう。

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まとめ

技能実習から特定技能へ在留資格を移行するための条件と、移行申請を行うために準備をはじめる時期について、わかりやすく解説してきました。

技能実習生ではない外国人が特定技能の在留資格を取得するためには、日本語能力試験と技能検定試験に合格しなければなりません。しかし、技能実習2号を良好に終了し、技能実習の職種・作業内容が特定技能1号の職種と同じであれば試験を受けずに特定技能へと移行できます。

ただし、特定技能への移行申請には時間がかかりますので、実習生と相談する時間も含めて、在留期限の半年ほど前から準備をはじめておくと安心です。

ぜひこの記事を参考にして、技能実習から特定技能へ移行を進めていきましょう。