技能実習制度・特定技能制度のそれぞれの目的
技能実習と特定技能の制度は、名称は似ていても目的に明確な差があります。以下では、それぞれの制度の目的について説明します。
技能実習制度
技能実習制度の目的は、日本の持つ「技術や知識を発展途上国などへ提供」することで、国家発展へ協力することです。
国が主導となって技術習得の機会を提供し、国際社会の調和や全体の発展に貢献する意図があります。
技術習得を目指す外国人実習生は、出身国では習得することが困難な技術や知識を習得し、日本の企業が技術習得の場を提供します。
特定技能制度
技能の習得を目的としている技能実習制度とは違い、特定技能は「人手不足の解消」を目的としています。そのため、特定技能による外国人労働者には「即戦力となりうる技術を持つこと」が求められます。
特定技能制度を活用して就業する予定の職種に合わせた「技能試験」と、日常や業務に支障が出ない程度の「日本語試験」を合格しなければなりません。
技能実習と特定技能の大きな違いは、技術を「実習生として習得」するか「労働者として提供」するか、という点になります。
技能実習制度・特定技能制度の就労面での違い
技能実習制度と特定技能制度では、実際に就労可能な「業種」と「業務内容」に違いがあります。ここでは、それぞれの制度で対応している業種と業務内容について紹介します。
受け入れ業種数
特定技能制度を活用して、外国人労働者を受け入れ可能な業種数は「14業種」です。一方、技能実習は「80業種」で受け入れ可能です。(2019年11月現在)
技能実習
・建設業「22業種」
さく井、建築板金、冷凍空気調和機器施工、建具製作、建築大工、型枠施工、鉄筋施工、とび、石材施工、タイル張り、かわらぶき、左官、配管、熱絶縁施工、内装仕上げ施工、サッシ施工、防水施工、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工、表装、建設機械施工、築炉
・農業「2業種」
耕種農業、畜産農業
・漁業「2業種」
漁船漁業、養殖業
・食品製造「11業種」
缶詰巻締、非加熱性水産加工食品製造業、食鳥処理加工業、加熱性水産加工食品製造業、水産練り製品製造、牛豚食肉処理加工業、ハム・ソーセージ・ベーコン製造、パン製造、そう菜製造業、農産物漬物製造業、医療・福祉施設給食製造
・機械・金属「15業種」
鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造
・繊維・衣服「13業種」
紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製作、カーペット製造、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製
・その他「14業種」
家具製作、印刷、製本、プラスチック成形、強化プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装、紙器・ダンボール箱製造、陶磁器工業製品製造、自動車整備、ビルクリーニング、介護、リネンサプライ
・社内検定型「1業種」
空港グランドハンドリング
上述の80業種で、技能実習制度が適応されています。それぞれの業種の中でも、作業内容が細分化されており、合計144作業で技能実習生が受け入れられています。
特定技能
特定技能の受け入れ可能業種は、以下の14業種です。(2019年11月時点)
・介護
・素形材産業
・ビルクリーニング
・電気電子情報関連産業
・産業機械製造業
・建設
・造船舶用工業
・航空
・自動車整備
・宿泊
・農業
・飲食料品製造業
・漁業
・外食業
特に人手不足が深刻とされている業種で、受け入れが可能となっています。技能実習から特定技能の在留資格へ変更する場合、上述の14業種内でのみ可能となります。
今後増設される可能性もありますが、2019年11月現在は、14業種以外では移行することができない点に注意が必要です。
また、上述の14業種の中でも特定技能1号と2号とでは、働き方も異なります。特定技能1号2号との違いについて、詳細は以下のページで詳しく解説しております。
やさしく解説!新在留資格「特定技能1号」のメリット・問題点とは
主な対応作業
技能実習制度では、技術や知識の習得が目的とされており、高度な専門性を要する作業のみが対応可能でした。
特定技能制度では、人手不足解消が目的のため「単純作業」と呼ばれる業務も対応可能とされています。しかし、日本人従業員が従事した際にも必要になる「業務に付随するものであれば可能」という点に注意が必要です。
転職の可不可
特定技能制度では、共通する業種内であれば転職が可能です。技能実習制度では転職は原則不可となっています (ただし、実習先事業の倒産や2号から3号への移行時の転籍は可能) 。
在留期間
技能実習の在留期間は最長で5年です。特定技能による在留期間は、1号の場合、技能実習同様「最長5年」です。一方で、熟練した技能や経験が必要となる、特定技能2号には在留期間の上限が設けられていません。
特定技能1号と2号の違いについて、詳細は以下のページで詳しく解説しております。
特定技能1号2号の違いについて解説
技能実習と特定技能(1号)の違いについて
上述でご説明した技能実習と特定技能(1号)の違いを以下の表にまとめました。
技能実習 | 特定技能1号 | |
受け入れ業種数 | 80 | 14 |
単純作業の可否 | 不可 | 可(業務に付随するもの) |
転職の可否 | 原則不可 | 可(対応可能業種内) |
在留期間 | 最長5年 | 最長5年(2号は無期限) |
技能実習から特定技能の在留資格への変更方法
技能実習2号を良好に修了している場合は、特定技能へ在留資格を変更する際、特定技能資格取得に必要な「日本語試験」と「技能試験」が免除されます。
ここでは、技能実習から特定技能へ変更する方法について紹介します。
方法①
出入国管理省庁へ「在留資格変更許可申請」を行い、審査が通れば特定技能1号への移行を行うことができます。申請中に在留資格がなくならないよう、在留期間の満了時期に注意が必要です。
方法②
技能実習生から特定技能への許可申請には、審査に時間を要する可能性があります。しかし、技能実習生は、在留期間を満了すると在留資格が喪失してしまいます。
移行措置として、審査に要する期間にも在留できるように「特定活動」という資格が特例で与えられています。
2019年9月末までに在留期間が満了となる人が対象となり、期間は4カ月間で、期間中の就労も許可されています。
技能実習生から特定技能へ在留資格変更を行う際の「特例措置」について、詳細は以下のページで詳しく解説しております。
技能実習生から特定技能へ変更!特例措置について解説
まとめ
技能実習と特定技能の制度は、それぞれに違う目的があります。
しかし、技能実習で技術や経験を身に着けた人材であれば、企業にとって即戦力として雇用できる存在になります。
技能実習生にとっても、実習先として長く過ごしている企業であれば、意思疎通ができており、信頼関係を1から構築する必要もありません。
特定技能資格を有する外国人労働者を「新規」で雇用するよりも、技能実習2号を修了している実習生を雇用したほうが、双方にとってのメリットが多いと考えられます。