技能実習生を受け入れるには費用が掛かる!?それぞれの理由や内訳を紹介

技能実習生を受け入れるために、企業側は費用を負担する必要があることをご存知でしょうか。 中には、技能実習生の受け入れを検討していて、費用が発生することを知っていても、具体的に「どの程度の費用を準備する必要があるのか」という部分がわかりにくいことから、受け入れに踏み込めずにいるという企業もいるでしょう。 ここでは、「受け入れる前の準備段階」に必要となる費用から「受け入れ決定後」「就労開始以降」にかかる費用まで、詳しくお伝えしています。 また、2019年4月にスタートした「特定技能」の在留資格へ変更する際の費用や、注意点などについても触れています。

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まず監理団体(組合)への加入費用が必要

技能実習生を受け入れる際、受け入れ企業は「監理団体への加入」を行います。

監理団体とは、技能実習生を受け入れる企業が所属している「非営利団体」で、外国人技能実習生の受け入れや、企業への派遣を行っています。

監理団体の中でも、「一般管理事業」と「特定管理事業」の2種類があります。「特定管理事業」の許可を受けている監理団体であれば、技能実習1号と2号についての実習監理を行うことが可能です。

さらに、「一般管理事業」の許可を受けている監理団体は、1号・2号に加え、3号の実習監理を行うことができます。

2019年11月現在、監理団体は2,754団体が法務省の認可を受けています。

(参照:法務省 受け入れ団体に係る情報 監理団体の許可)

監理団体の仕事は、大きく分けて3つあります。
1.技能実習生が適切な技能実習を受けられているか監視・指導を行う
2.技能実習制度についての正しい情報を、受け入れ企業や送り出し機関へ開示・周知
3.受け入れ企業を定期的に監査し、出入国管理省庁へ報告を行う(3カ月に1回)

上述のような監理を受けるため、監理団体への加入には、出資(入会)金・年会費などの費用が必要となります。一般的には、出資金1万円~10万円程度、年会費2~10万円程度です。

非営利団体であっても、運営には資金が必要になり、組合の規模や業種によって必要資金には差があります。この費用は、技能実習生が就労開始以降も必要になります。

技能実習制度に関する詳細は、以下のページで詳しく解説しております。
これを読むと新しい「技能実習制度」がわかる!

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技能実習生の就労前に発生する必要

ここでは、技能実習生を受け入れる際、就労前に必要となる費用について紹介します。

入国準備に必要な費用

就労前に必要となる費用には、来日するための費用や手続き・申請のための費用などが含まれます。技能実習生の出身国や、人数によって変動するため、余裕を持って準備しておくと安心です。

・技能実習生の渡航費用 約10万円~
・雇用前講習費用(入国前) 約2万円
・技能実習生向け総合保険(3年) 約2万円~6万円(年齢によって変動)
・在留資格認定申請費用等 約2万円

国際研修協力機構(JITCO)に加入し、技能実習生の受け入れに関するサポートを受ける場合は、別途費用がかかります。(加入は任意)

JITCOは、監理団体・送出機関・政府・受け入れ企業などの間に立ち、申請手続きの支援や人材育成、実習生の保護などを行っている機関です。

受け入れ企業の技能実習責任者は、3年に1度「養成講習」を受ける必要があり、JITCOでも受講が可能です。

自社で、技能実習生の受け入れに関する準備や講習、申請手続きなどの手配が難しい場合、JITCOでトータルにサポートを受けられる安心感があります。

そのほか、自社から人事担当者を直接国外に派遣し、実習生を採用する場合は、人事担当者を派遣するための渡航・滞在費用も必要です。

入国から就労開始までにかかる費用

技能実習生の受け入れが決定した際には、就労開始までに以下の費用が必要になります。

・空港等への迎え費用 約1万円~(所在地による)
・雇用前健康診断費用 約1万円
・雇用前講習費用(入国後) 約10万円(教材費等も含む)
・講習受講手当 約6万円~

1人の技能実習生を受け入れるために必要になる費用は、組合加入費用を含め、トータルで「約60万円~80万円」程度です。

これらの費用は、受け入れを決定する前段階である「採用検討」の時点から、費用が発生します。採用に至らない場合でも、必要になる費用を含むと、さらに加算されることになります。

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技能実習生の就労開始後に発生する費用

技能実習生の受け入れが済み、就労開始後に発生する費用について見ていきます。

監理団体への費用は、就労開始後も毎年年会費が必要になります。また、監理団体は日本国内の組織であるため、実習生の出身国から送り出す役目は「送り出し機関」が担っています。

送り出し機関は、技能実習生を日本へ送り出す機関で、日本政府との二国間協定の締結により決定します。現地への募集や受け入れ企業とのマッチングなどを行います。

送り出し機関は、インド、ウズベキスタン、インドネシア、カンボジア、タイ、スリランカ、中国、バングラデシュ、ネパール、パキスタン、フィリピン、ペルー、ベトナム、ミャンマー、ラオス、モンゴルの16カ国にあります。(2019年11月現在)

監理団体同様、送り出し機関への管理費用が必要になり、金額は年間約12万円です。また、技能実習生が「技能検定」を受ける際の費用も、受け入れ企業の負担で、約2万円です。

技能実習生が本国へ帰国する際の費用も必要になりますが、年間約2万円程度を積立てます。帰国費用は、頻度などにより変動します。

また、職種によって差はありますが、毎月の給与として約17万円や、社会保険費用なども別途必要になります。

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技能実習生から在留資格の変更が必要になった場合の費用

技能実習生は在留期間が決まっており、最長で5年です。しかし、優秀な技能実習生の中には、2019年4月に新設された「特定技能」の制度を利用し、技能実習による在留期間の満了後も就労しているケースがあります。

技能実習生は、特定技能1号の資格取得に必要な「一定の日本語力」と「職務知識やスキル」を持っていると判断されます。

そのため、日本語試験や技能試験の受験が不要となり、在留資格の変更のみで就労が可能。在留資格の変更には、申請手続きが必要になります。

法的に必要な書類などを揃えるのは、中小企業では難しいこともあるため、専門業者に依頼する方法もあります。申請代行業者(行政書士など)に依頼すると、約5万円~15万円の費用が必要です。

また、在留資格の変更に伴い、特定技能の外国人労働者を雇用するための待遇を準備することが求められます。

給与水準も、日本人の同一業務を行う労働者と同等以上を支払う必要があり、住居や私生活面でのサポート体制も整えなければなりません。

その場合は、特定技能の外国人労働者のサポートを行う「登録支援機関」へ依頼するなどして対応するようにしましょう。

しかし、技能実習から特定技能へ在留資格を移行できるのは、技能実習2号以上を修了している必要があるため、すべての技能実習生が該当するものではありません。

また、技能実習よりも特定技能の資格では、業種数が少ないため、移行できる業種とできない業種があることにも注意が必要です。

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まとめ

技能実習生の受け入れには、受け入れに至るまでにも多くの費用が必要となります。

外国人労働者を初めて受け入れる企業にとって、技能実習生は最長5年の在留期間であるため、受け入れる面でのハードルは低くなるのではないでしょうか。

しかし、特定技能も1号の有資格者であれば在留資格は最長5年です。とはいっても、特定技能の有資格者は、一定の日本語能力と職務が行える「即戦力」でもあります。

特定技能の場合は、業務指導を最初から始める必要がないという利点もあり、受け入れ側の業務負担軽減につながります。

人材確保のために技能実習生の受け入れを検討している場合、特定技能の外国人労働者の雇用も合わせて考えてみてはいかがでしょうか。