これを読むと新しい「外国人技能実習制度」がわかる!

離職率の上昇や定着率の低迷、職場環境の悪化など、日本企業は人材において深刻な問題を抱えています。 国内の労働力だけではまかないきれず、外国人材の力に頼らざるをえない状況になっています。海外からの人材を受け入れるため注目されているのが「技能実習」です。 国際貢献という意味合いが強い「技能実習」。実際には、どんな内容で、企業はどこに注意を払って、活かせばいいのでしょうか。ここで「技能実習」について、詳しく解説をします。

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新技能実習制度「外国人技能実習制度」とは


新技能実習制度「外国人技能実習制度」について解説します。

「外国人技能実習制度」の概要

2017年の在留外国人数のうち、「外国人技能実習制度」による資格取得者は、27万4,233人でした。前年に比べて20%増えていることが、法務省によって報じられました。

(参照:法務省・平成29年末現在における在留外国人数について(確定値))

「外国人技能実習制度」という言葉を、ニュースや各メディアでも耳にする機会が増えています。

「外国人技能実習制度」とは「我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、その開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度」であると定義されます。

(引用:厚生労働省・運用要領)

この制度が始動したきっかけは、2016年11月28日のこと。外国人の技能実習の適正な実施、および技能実習生の保護に関する、技能実習法と呼ばれる法律が公布されました。

翌年11月1日に施行され、技能実習法に基づいた新しい「外国人技能実習制度」が導入されたのです。これまでは「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法)と、入管法の省令を根拠法令として実施されてきました。

(参照:厚生労働省・外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の概要)

しかし「外国人技能実習制度」の見直しにともない、入管法に代わり技能実習法令によって規定されるようになります。

技能実習法令における特徴は、おもに3本柱で考えられます。技能実習の適正な実施と、人権侵害など技能実習生の保護、そして実習期間の延長や、対象業種・受け入れ人数枠の拡大など制度の充実です。

「外国人技能実習制度」における受入れ方式

・外国人労働省を受け入れる方式には、2種類あります。企業単独型と団体監理型です。

企業単独型は、実習実施者である日本企業が、派遣元である海外の所属企業や合弁企業、取引先企業の職員を候補者として受け入れて、技能実習を実施する方式です。

団体監理型は、事業協同組合や商工会などの営利を目的としない監理団体が、技能実習生を受け入れて、海外にある派遣元企業の傘下の日本企業で、技能実習を実施する方式です。取り決めは、送り出し国の政府と日本国の政府によって行われます。

現在「外国人技能実習制度」では、受け入れが進められている90%以上が団体監理型によるものです。どちらの方式であっても、技能実習生は入国後に、日本語教育および技能実習生の法的保護を受けることになります。

(参照:JITCO・外国人技能実習制度とは 2技能実習生受入れの方式)

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新たに導入された認定制とは


新たに導入された認定制について解説します。

技能実習制度の現状と見直しについて

「外国人技能実習制度」の現状を、技能実習生の数から説明します。

2017年末の時点で、27万4,233人。「技能実習2号」への移行者数は、8万6,583人います。「技能実習」では、技能等に習熟・熟練レベルに応じて1号・2号・3号までの移行制度が設けられています。

受け入れ人数の多い国は、ベトナムが45.1%、中国が28.3%、フィリピンが10.1%。インドネシアやタイが後に続きます。ベトナム人が極めて多いのです。

「技能実習」移行対象職種一覧として、80職種144作業があります。「技能実習2号」への移行者が多い職種は食品製造関係、機械・金属関係、建設関係です。一方で、漁業関係は移行者が少ない状況で、推移しています。

さらに「技能実習」を実施する機関の半数以上が、従業員数19人以下の零細企業となっています。

(参照:厚生労働省・技能実習制度の現状)

今後も積極的に外国人の受け入れをしていく予定ですが、あくまでも目的は、経済発展を担う「人づくり」のためです。人材不足を解消する目的で雇用することは禁じられています。

監理団体の許可・技能実習計画の認定における手順

認定を受ける手順で押さえておくべき点は3つあります。

(1)外国人技能実習機構へ監理団体の許可申請を行って、主務大臣からの許可を受けなければなりません。

(2)実習実施者は、受け入れようとする実習技能生ごとに、実習計画を作成・提出して、外国人技能実習機構から認定を受ける必要があります。技能実習計画を作成するために、団体監理型に限り、実習監理を受ける監理団体の指導を受けることが義務づけられています。

(3)認定を受けた技能実習計画に従って、実習実施者は「技能実習」を実施しなければなりません。違反があった場合、改善命令や認定取消しの対象になるので注意を払いましょう。

(参照:JITCO・外国人技能実習制度とは 5技能実習計画の認定)

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「外国人技能実習制度」のこれから


「外国人技能実習制度」のこれからについて解説します。

「外国人技能実習制度」の注意点

「外国人技能実習制度」における注意点は、技能実習生の保護です。技能実習法によって、禁止事項が規定されています。

暴力・脅迫・監禁などによる「技能実習」の強制の禁止や、「技能実習」に係る契約の不履行についての違約金などの禁止、旅券(パスポート)・在留カードの保管などの禁止などが挙げられます。

規定内容を一例として、文面で確認しておきましょう。

「実習監理を行う者(第四十八条第一項において「実習監理者」という。)又はその役員 若しくは職員(次条において「実習監理者等」という。)は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、技能実習生の意思に反して技能実習を強制しては ならない。」(法第46条)

(引用:厚生労働省 運用要領)

この規定に反した場合は、1年~10年以下の懲役、又は20万円~300万円以下の罰金の罰則に処されます。

遵守すべき事項を破れば、処罰だけでなく、社会的な信頼を失うことになります。国内だけではなく、グローバル規模で不利益をこうむることになるでしょう。

「外国人技能実習制度」の問題点と対策

「外国人技能実習制度」によって、一部の企業では技能実習生に対して、低賃金労働者として扱うケースが見受けられます。産業構造上、給与水準が低い分野もありますが、不当な雇用を続けていると、低賃金という体制から脱却することができません。

賃金不払いなどの労働関係法令違反も、過去に発生しています。外国人・日本人問わず、慢性的に所得が低くなった仕事は、就業者から避けられるようになります。

離職率が高く、人材が定着しない会社がすべきことは、他者との外国人労働者の取り合いではありません。技能実習生を雇用したとしても、何の解決にもなっておらず、失敗を繰り返すことになるでしょう。

外国人労働者を受け入れる環境を整える必要があります。対策は、海外の就業者にとってのメリットを考えることです。給与だけではなく、労働環境・条件を見直して、外国人が安心して技能・知識を身につけられるように、就業しやすい環境づくりが求められます。

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まとめ

新たな「外国人技能実習制度」についてや、概要や現状について、そして見直すべき点や今後の見直すべき点も解説してきました。

注目度が高い「外国人技能実習制度」だからこそ、理解を深めて活かさなければなりません。日本人・外国人労働者が働きやすい会社に成長するため、かつ技能実習生を熟練度の高い人材に育成するため、今後も最新の動向に関心を払っていきましょう。