建設業で特定技能外国人は就労可能?事前準備から雇用までの知識

建設業でも特定技能の資格が新設され、人手不足解消の方法として「外国人労働者」が注目されています。しかし、2019年に新設されたばかりの制度であり、事前の準備や受け入れ手順について、難しく感じる部分もあるのではないでしょうか。 この記事では、特定技能で就労可能な職種だけでなく「業務内容」についてもスポットをあてています。また、資格取得に関する手順や、技能実習からの移行、受け入れまでの準備についても紹介しています。

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特定技能が就労可能な分野

特定技能の資格を活用して、外国人労働者が就労可能なのは「14業種」です。ここでは、14業種に絞られた背景と、建設業でも就労可能な「仕事の分野」について紹介します。

建設業含め14業種の就労が可能

特定技能の資格が新設された業種は14あり、その中に建設業も含まれています。

14業種に絞られた背景には、国内の人材確保の取り組みが追いつかず、未だに人材不足が深刻な状況であると判断されたことが影響しています。

以下の記事で、特定技能資格が新設された14業種について詳しく解説しております。
決定版!「特定技能」で対象となる14業種をわかりやすく学ぶ

建設業では、「東京オリンピック2020」や2025年に開催予定となっている「大阪万博の会場建設」「老朽化したインフラ対策」など、需要が増加傾向にある点が指摘されています。

需要が増え続ける一方で、日本人の建設業への就労者数は減少傾向にあるといわれています。

危険の伴う作業や、社会活動に影響を出さないよう、深夜作業が必要になるなど、労働環境の問題も一因でしょう。

専門的な知識や技術が必要になるため、長年にわたり技術を磨き続けなければならず、即戦力を確保することが難しい側面もあります。

建設業の中でもさらに職務が絞られている

特定技能には1号と2号の2種類があり、それぞれ対応できる職務に違いがあります。1号と2号の大きな違いは、職種に対する「熟練度の差」です。

1号は「相当程度」のスキルを求められるのに対し、2号は「熟練した技術」が求められます。

具体的には、現場監督者の指示のもと作業を行えるのは「1号資格」であり、現場監督者を行えるレベルの技量を求められているのが「2号資格」です。

以下では、建設業の中で1号・2号の有資格者が行える「職務の違い」について紹介します。

特定技能1号

特定技能1号は、他の14業種同様に「一定程度の日本語を用いて意思疎通ができる」ことも必要です。その上で、一定程度のスキルを有し、職務に従事することができる即戦力であることも求められます。

すべての職務区分が対象ではありません。特定技能1号において、作業可能な職務は以下のとおりです。(2019年度現在)

・型枠施工
・コンクリート圧送
・左官
・トンネル推進工
・土工
・建設機械施工
・屋根ふき
・鉄筋継手
・鉄筋施工
・電気通信
・表装
・内装仕上げ

これらの区分の業務を「監督者の指示のもと」で行うことができます。

特定技能2号

特定技能2号の資格では、特定技能1号と同様の区分業務を行うことができます。1号との違いは、複数の建設技能者(職務従事者)を「指導しながら工程管理ができる」点です。

従事している業務区分の全行程を任せられる技能と経験、知識が必要になります。2号資格が与えられる技能水準の基準としては「業務経験4年以上の日本人と同程度」が必要です。

特定技能1号と2号の違いについて、詳細は以下のページで詳しく解説しております。
特定技能の1号2号の違いについて解説

また、技能実習から特定技能1号資格への移行も可能ではありますが「技能実習から職務区分すべてで移行はできない」という点に注意が必要です。

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今後も徐々に対象業務が増えていくことが予想される

特定技能は2019年4月より施行されはじめた資格であり、毎年度運用方針を改正し、最適化が行われます。人手不足の状況を注視しながら、試験実施を行っているためと考えられます。

建設業では、以下の20種類の職務区分で、2020年度以降の導入が決定しています。

・外壁仕上げ
・PC
・基礎工
・ウェルポイント施行
・標識、路面標示
・のり面工
・建築板金
・電気工事
・送電架線施行
・溶接
・ダクト
・鉄骨
・海洋土木工
・建築塗装
・防水
・保温保冷
・ウレタン断熱
・造園
・さく井
・シャッター
・ドア施行

その他、7種の職務で検討中となっており、今後さらに増加していく可能性があると考えられます。

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特定技能外国人を受け入れるための流れ

特定技能外国人を受け入れるには、受け入れ側の企業にも準備が必要です。ここでは、受け入れまでの流れについて紹介します。

特定技能の在留資格の取得には条件がある

外国人労働者が特定技能の在留資格を取得するには、いくつかの条件があります。

18歳以上であること

年齢さえ満たしていれば、職歴・学歴などは問われません。

技能実習2号を取得している、もしくは技能、日本語試験などに合格している

技能実習2号を「修了」している場合、そのまま特定技能1号の同様の職務区分へ移行できます。

また、技能検定3級に合格していれば、特定技能の評価試験を受けずに、資格取得条件を満たすことが可能です。技能検定は、型枠施行・左官・屋根ふき・内装仕上げ・鉄筋施工の5つが特定技能の職務区分に当てはまります。

日本語試験については「日本語能力試験のN4以上」を合格していれば、条件を満たしていることになります。

技能試験について

就労予定の職務区分についての「技能評価試験」を合格する必要があります。2019年11月現在、技能試験は実施されていませんが、令和2年2~3月頃にベトナム・フィリピンで実施予定となっています。

日本語試験について

「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することが求められます。A2レベルが必要で「日常会話や職務に必要な日本語のやり取りができる」ことが合格ラインとされています。

雇用までの流れ

雇用に至るまでには、以下のような手順が必要になります。

①企業が直接募集をかけるか紹介会社から派遣してもらう

企業が出す求人に、特定技能資格を有する外国人労働者が応募する形での雇用方法と、人材紹介業者を介して雇用する方法があります。

海外の仲介業者には、悪質ブローカーなどがいる可能性があるため、日本政府から認められている紹介業者を介することをおすすめします。

②特定技能外国人と雇用契約を交わす

契約書の締結と同時に、健康診断を受診する、受入機関の行うガイダンス(講習や日常サポートに関して)を受けるなどの手続きを行います。

③入管局へ申請を行う

入管局(建設の特定技能は国土交通省)へ特定技能外国人労働者の雇用に関する書類申請を行います。

労働者本人もしくは、行政書士や登録支援機関へ委託する方法をとることが考えられます。

④就労開始

すべての手続きが修了次第、就労開始となります。日常生活がスムーズに行えるよう、業務外のサポートも必要になります。

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特定技能外国人を受け入れるための準備


受け入れ側の企業にも、以下のようなサポートの提供が求められます。

・入国前の生活ガイダンスの提供
・入国時の空港等への出迎え、帰国時の空港等への見送り
・住居の確保
・生活オリエンテーションの実施(給与振込口座開設・携帯電話の契約支援など)
・日本語習得のための支援
・外国人からの相談や苦情への対応、サポート
・各種行政手続き、申請についての情報提供と支援
・外国人と日本人との交流を促進するための支援
・離職時の転職支援

これらのサポートが、企業にとって業務負担となる可能性があるため「登録支援機関」に委託する方法もあります。

まとめ

特定技能の資格は、建設業の人手不足解消につながる一手として期待されています。しかし、受け入れ側の企業にも、適切な労働時間や給与の支払い義務、サポートの提供など、求められる要素が多くあるのも事実です。

業務負担を抑えるには、特定技能外国人労働者のサポートを担う「登録支援機関」への委託も選択肢のひとつです。スムーズに雇用を行うには、支援体制を整えることが先決であるといえるでしょう。