技能実習生の面接で質問すべきことは?注意点やポイントも

技能実習生を受け入れるときに行う面接では、どのような質問をすれば良いのか迷うものです。文化や考え方の違いによって、意図せず相手を不快な気持ちにさせてしまう可能性もあるため、迂闊なことは口にできません。 しかし、技能実習生を受け入れる以上、現場で問題なく行動して必要な知識を身に付けていけるかどうか、最低限の確認は必要不可欠です。 ここでは初めて技能実習生を受け入れるという方へ、面接の場で活用できる質問事例と、注意点について解説します。

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技能実習生の面接での質問事例

実習実施者にあたる受け入れ企業は、送り出し機関を介して実習生候補を募集します。条件を確認したうえで応募してきた実習生候補の中から、最終的に受け入れる外国人を絞り込むために、大まかに分けて3ステップの選考を行わなくてはなりません。

筆記試験や実技試験とともに行われる選考が、候補生との面接です。日本人の新卒を相手とする面接では効率重視のためグループ形式で行われることがありますが、外国人の場合は1対1のほうが滞りなく進められます。

実務能力のみを見るのであれば筆記試験や実技試験でもある程度知ることができますが、採用後のミスマッチを防ぐためには面接を軽視するべきではありません。

自社との相性を確認するためにも、技能実習生との面接では最低限、次にあげる5つの質問を盛り込みましょう。

基本的な質問

第一に行うべき基本的な質問は、「何故、技能実習生の募集へ応募したのか」「自社を選んだ理由は何か」です。

具体的には、以下の3つを質問します。

・志望動機
・日本語を学ぼうと思ったきっかけは何か
・希望する条件は何か

志望動機や日本語を学ぶきっかけとなったことを明確に答えられるかどうかで、候補者の自社や仕事内容への理解度や向上心を確認することができます。「とりあえず日本の企業ならどこでも良い」と考えている場合は、曖昧な答え方となるでしょう。

ただし、志望動機や日本語を学ぶきっかけについての質問は、各国の語学学校や送り出し機関で学ぶ基本的なフレーズでもある点に注意してください。テンプレートな回答をされる可能性もあるため、あくまでも参考程度に留めるべきです。

外国人に限らず、募集内容とのミスマッチは早期離職につながりかねません。面接の段階で希望する条件を聞き取り、自社で対応できる範囲かどうか確認しておくことをおすすめします。互いに誤解を生まないよう、具体的な仕事内容や会社の経営方針、目標などはあらかじめ伝えておくことも重要です。

自身について

ほかの技能実習生や従業員と問題なくコミュニケーションを取れるかどうか、人柄の把握も必要です。ただし踏み込み過ぎる質問内容は差別だと受け取られるおそれもあるため、質問内容に注意しなくてはなりません。

相手を不快にさせることなく、個人の人となりを知るためには、たとえば以下の質問があげられます。

・自覚している長所と短所は
・今まで一番うれしかったことは
・今まで一番つらかったことは
・職場で問題が発生したときの対処方法
・上司や同僚との関係の築き方
・日常生活で困っていること
・これまでの勉強や仕事に関する経験

技能実習生に長所や短所、うれしかった経験などを質問することで、ある程度の人柄を知ることができます。また、職場で問題が発生したときや周囲との関係の築き方は、ストレスや問題に対する処理能力や考え方などが分かるでしょう。

技能実習生の過去の経験について知りたいときは、学歴や職歴などステータスで聞くよりも、打ち込んできたことや実際に経験した内容について聞くほうが無難です。

日本で働くことについて

一定期間を日本で過ごして働いてもらう以上、お客様感覚でもてなし続けるわけにはいきません。きちんと日本の職場環境や文化に馴染もうという姿勢があるかどうか、事前に面接で確認しましょう。

・集団行動はできるか
・日本のビジネスマナーを知っているか
・日本や職場環境で気になったことはあるか

例として上記のような質問があげられます。何よりも重要なポイントが、他の技能実習生や従業員とともに同じ環境で業務にあたることができるかの確認です。

チームやライン作業などの集団行動、二人体制でのコンビネーションといった、周囲の状況を把握したうえで適切に行動できる能力が求められます。

また、送り出し機関や学校で日本のビジネスマナーについてどの程度の講習を受けているのかを面接時に質問しておくと、採用後の教育プランにも反映できます。外国人目線で見て、改善すべきだと思うことも聞いておくと受け入れ体制の構築に役立つでしょう。

目標について

単純に海外や日本で働きたいと、漠然としたイメージのみで技能実習生へ応募してきた人材の場合、早期離職する可能性が高くなります。基本的な質問で行った志望動機について、将来のキャリアプランも含めて詳細を確認することで、明確な目標を持っている人材か見極めることができます。

具体的な質問例は、以下の2点です。

・達成したい目標は何か
・どのようなキャリアを描いているか

日々の技能実習の中で取得できる資格や能力について、どの程度はっきりと理解できているのかを確認することにもつながります。

資格・能力を得て将来的にどのようなキャリアを積んで行きたいのか、どのようなステップアップを計画しているのかを聞き取りましょう。教育プランや業務内容と乖離している場合は、無理に採用するとミスマッチを生じさせかねません。

家族の同意は得られているか

技能実習生を受け入れるうえで、基本的な質問とともに必ず確認しなくてはならないことが家族の同意の有無です。

まれに家族には内緒で選考を受けていたり、反対されていることを黙って応募していたりする候補生もいます。本人から「問題ない」と言われても、後々のトラブルに発展しないとは言い切れません。

ある日突然、「家族に反対されているから」と帰国を告げられるほか、家族が直接来日し抗議してくる可能性も考えられます。このようなことが起こらないよう、家族の同意を得ていることを必ず確認してください。

ちなみに子育て事情は国や家庭によって大きく異なるため、幼い子どもがいながら日本に単身で来た場合であっても、必ずしも家族に無断で応募してきたとは限りません。国によっては両親が出稼ぎに行き、祖父母が子育てを担う習慣があることを理解しておきましょう。

また、あわせて在留資格(ビザ)の種類や賃金への理解についても確認しておくと安心です。実際とかけ離れた収入プランを立てている場合は、送り出し機関が多めに伝えているか、残業など無理な勤務を計画している可能性があります。

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技能実習生の面接でこんな質問は注意

国や文化の違いに触れる質問を行うときは、相手が差別されていると受け取らないよう、十分な配慮が必要です。注意すべき質問のテーマとして、以下の項目があげられます。

・国籍
・宗教
・学歴
・性別

これらに限らず、相手が「悪意がある」と思う可能性のある質問は避けるべきです。技能実習生の選考を行うときは、個人の能力や適性を重視して、差別につながる理由で不採用としないよう注意しましょう。

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技能実習生に質問をする際のポイント

採用後のミスマッチで困るのは、技能実習生も受け入れ企業も同様です。早期離職や生産性低下を防ぐためには、選考段階で可能な限りミスマッチの可能性を潰しておかなくてはなりません。

自社に最適な人材を選ぶために、以下のポイントを重視すべきです。

・採用したい人物像を明確にする
・質問は簡潔にする
・重要な事項は繰り返し確認する

まずは採用したい人物像を明確にしておく必要があります。求める技術や日本語能力、許容できる範囲まで項目化し、面接担当者が誰になっても平等かつ共通の基準で評価できる仕組みを用意します。

候補生に対する質問文は簡潔なものに留め、本人や通訳者が正しく理解したうえで応えられるよう配慮しましょう。重要な事項については、条件反射で「問題ない」「理解できている」と答える場合もあるため、言葉を変えて繰り返し確認することが重要です。

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まとめ

外国人の技能実習生を受け入れるための選考では、筆記や実技とともに面接も行います。送り出し機関を介して応募してくる候補生は実際の受け入れ予定人数よりも数倍の人数となることもあり、自社に合う人材を探すことは容易ではありません。

また、外国人を採用するうえで起こりやすいトラブルが、意図しない言動で相手が被差別を感じることです。面接の質問においても起こり得る問題のため、上記で取り上げたように必要なポイントは押さえつつも、配慮ある質問を行いましょう。