特定技能外国人は宿泊業界の救世主となれるのか?解説します

昨今、様々な業界で人手不足が問題となっています。以前は外国人を雇用できる業種には制限がありましたが、2019年4月の法改正にともない、門戸が大きく開かれました。労働力不足解消に一役買う特定技能外国人の雇用と、宿泊業界に与える影響について解説いたします。

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宿泊業界で特定技能外国人を受け入れる背景

まずは宿泊業界で特定外国人を受け入れはじめた背景からみていきましょう。

人手不足

人材確保が難しいことから、外国人を雇用することにより人材を確保すべき業界として、法務大臣が「宿泊業界」をあげています。2017年度の雇用人員判断指数によると、人員不足が顕著な運輸・郵便、建設業をさしおいて、もっとも人員が不足している業界として宿泊業があげられています。

その背景には、長時間労働や勤務体系の不規則さ、休日に休みがとりにくいといった業界ならではの特殊性があります。

そのため、一旦就職してもその後の離職率が高いことも、人手不足に繋がっているのです。さらに、有効求人倍率が他の業界に比べて高いというのも要因の一つ。2017年度の有効求人倍率をみると、全業種の平均が1.38倍であるのに対し、宿泊業界は6.15倍とかなり高い数値となっています。

今後5年間の人員予想によると、宿泊業界全体で、10万人もの人手不足が予想されています。国内雇用促進および業務の効率化による人員確保の努力をしたとしても、なお2万人程度の人材が不足する計算となります。それを補う特定技能外国人における、今後5年間の受け入れ見込み数は、最大で2万2000人とされています。ただこの数値が可能となっても、絶対数はまだまだ不足している状態です。

観光客の増加

宿泊業界がここまで人手不足になっている要因に拍車をかけているのが、観光客の増加です。近年のインバウンド需要により、宿泊施設へのニーズが高まっているのも一因としてあります。

安部内閣が発足し、日本経済の成長戦略の一環として、観光に力をいれる施策が講じられました。それによって2014年から2015年までの間に、外国人観光客数はなんと47%増にもなっています。翌年2016年も前年比22%増という高い水準を維持しています。

さらに2020年には東京オリンピック・パラリンピック開催を控えており、さらなる訪日観光客の増加が予想されます。また日本国内に住んでいる人も東京オリンピック・パラリンピック競技を見るために、宿泊施設を利用することとなるでしょう。その反面、ホテル業界などの宿泊業界の人員は横ばいに留まっており、思った以上に増えていないことが、人員不足にさらに拍車をかけています。

実際に宿泊業界の約6割が人員不足を実感しており、一旦採用しても半年以内に離職してしまうという問題を抱えているのです。

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宿泊業における特定技能外国人の主な仕事内容

では、宿泊業における特定技能外国人が受け持つことができる仕事内容をみていきましょう。

・宿泊施設でのフロント業務から客室への案内業務

・宿泊施設での接客業務

・宿泊施設での企画運営、広報活動業務

・宿泊施設併設の直営レストランなどでのウエイトレス、ウエイター業務

・宿泊施設併設の直営レストランなどでの調理、盛り付け、片づけ業務

・宿泊施設内での客室の清掃業務、ベッドメイキング、布団の上げ下げなど

・宿泊施設での観光客への通訳業務

・宿泊施設併設の直営売店などでの販売業務

・宿泊施設内全般の清掃および保守業務

ご紹介してきたとおり、かなり多岐にわたりこれらを全般的にこなせる人員が必要となることが分かります。そのためには、雇用後も定期的な社員教育が欠かせないでしょう。

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宿泊業の特定技能を取得方法

外国人を雇用する際には、対象の外国人が宿泊業の特定技能を取得していなくてはなりません。具体的な取得方法についてご紹介します。

特定技能評価試験を受ける必要があり、これは業種ごとに必要な技能と日本語の試験の2つに合格しなくてはいけません。

宿泊業の場合は「宿泊業技能測定試験」の受験合格が技能試験となります。前述した通り、宿泊業に携わるには非常に多くの業務内容に携わる必要があります。ちなみに試験は、以下の5つのカテゴリーより出題されます。

・フロント業務

・接客業務

・レストラン、サービス業務

・広報、企画業務

・安全衛生、その他基礎知識

筆記試験と実技試験があり、実技試験では上記の5つのカテゴリーから1つが選定され、現場を想定した対応能力が試験されます。

「宿泊業技能測定試験」は年に2回、国内外で実施されており、日本国籍以外を保有している満18歳以上であることが対象です。おおむね筆記・実技試験総合で65%以上が合格基準となっています。

また日本語能力レベルは5段階のうち下から2つ目のN4レベルであることが条件です。

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宿泊業界に特定技能外国人を受け入れるためには

続いて、宿泊業界に特定技能外国人を受け入れるために知っておきたい雇用側の条件や、雇用にするにあたっての注意点について確認しておきましょう。

特定技能外国人を雇う宿泊業の会社に課される条件

特定技能外国人を宿泊業界で雇用するには特定技能1号が適用されます。それを踏まえた上で、旅館もしくはホテル営業の形態をとっている必要があります。形態としては、旅館業法に規定されている「旅館・ホテル営業」の許可を受けていなくてはなりません。

また、風俗営業法に定められる施設に該当していると、特定技能外国人は雇用できません。当然のことながら、特定技能外国人に風俗営業法に規定されている接待行為をさせることも禁じられています。

国土交通省が設置する「宿泊分野における外国人材受入協議会(仮称)」の構成員であること、外国人材受入協議会に対して、必要な協力を行うことも条件となっています。また国土交通省もしくはその委託を受けた者からの調査や指導に対しても、必要な協力を行わないといけません。

また、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託しようとする場合は、前述した国土交通省以下の3つの条件を満たした登録支援機関でないと委託が認められません。

つまり、雇用する会社自体が風俗などの性サービスを行う企業ではなく、それらを特定技能外国人にも求めないこと、さらには受け入れた特定技能外国人が安心して働けるために、関係団体からの調査などにも積極的に協力をすることが条件となっています。

宿泊業界に特定技能外国人を受け入れる際の注意点

特定技能外国人を雇用するにあたって、宿泊業界は特定技能1号に該当します。つまり、雇用した特定技能外国人には在留期間が存在し、最長5年しか雇用することができません。つまり、ともすれば業務に慣れた頃に帰国ということにもなりかねません。

そこで、教育体制をしっかりと整え、現場に即した対応ができるように、人材育成をする必要があります。また雇用している特定技能外国人が不満を訴え辞めてしまわないように、こまめに相談にのりサポートしていくことが、日本人従業員以上に重要となってくるでしょう。

また、特定技能外国人の雇用体系は、受け入れ企業との直接雇用のみとなっている点にも注意が必要です。

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まとめ

特定技能外国人を宿泊業に従事させたい場合は、特定技能評価試験として宿泊業技能測定試験の合格と、日本語能力試験N4級以上を満たす必要があります。

また、雇用する企業自体も定められた形態の企業であるなど、条件がかせられていますので事前に確認をしておきましょう。現状は5年までの雇用しかできませんが、オリンピック・パラリンピックによる観光客増加を前に、特定技能外国人の雇用は人員不足に一役買ってくれる可能性が期待できます。