問題山積!?技能実習制度の落とし穴と実情について考える

日本企業の抱えている問題のひとつが、人材不足。労働者を国内のみで確保するのが難しいため、外国人労働者を雇用することを視野に入れている企業は少なくないのではないでしょうか。 そんな企業のニーズにピッタリの制度が、技能実習制度です。ただ、技能実習制度の利用を考えているものの、問題も多く取り上げられているので不安という声があるのも事実。 ここでは技能実習制度で発生している問題と、問題回避のためにどんなことができるのかという点について解説します!

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外国人技能実習制度で発生している問題とは

海外からの人材を受け入れたいという企業に注目されている外国人技能実習制度。日本に働きに来た外国人と雇用主の双方にとってメリットが多いとみられる制度ですが、問題が発生しているのも事実です。

外国人技能実習制度の目的とは?

外国人技能実習制度の問題についてお話する前に知っておきたいのが、この制度の目的です。外国人技能実習制度は、ただ単に日本企業の人材不足を解決するために設けられた制度ではありません。

外国人技能実習制度の本来の目的は、日本で培った技術や経験を途上国に継承することです。つまり、日本国内の人手不足という問題を解決するためというよりも、国際貢献を目的に始まった制度と言えます。

とはいえ、実際には技能実習制度を低賃金で働く労働者を集めるためという目的で利用している企業が少なくないのも事実。そのため、技能実習制度にまつわる問題が増えているのです。

どのような問題が発生しているのか?

法務省が発表した「平成29年に外国人の研修・技能実習の適正な実施を妨げる「不正行為」について」によると、2017年に失踪した実習生は7千人を超え、2013年から5年間でおよそ2万6千人が失踪していると報告されています。

(参照:技能実習制度の現状(不正行為・失踪)

失踪する実習生は年々増加傾向にあり、2013年の時点では3千500人超えだったのが、翌年の2014年では5千人近くに、さらに2017年には7千人超えとなっています。

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技能実習生のトラブルが起こる背景

外国人技能実習制度を利用して日本に来ている技能実習生に、失踪などの問題が起きるのはどうしてなのでしょうか。

問題が起こる背景としては、次のようなものが挙げられます。

低賃金・賃金未払い・劣悪な労働環境

2015年の厚生労働省の調査において、実習実施機関およそ5000のうち、およそ7割が労働基準の法令違反をしているという結果が報告されています。

つまり、日本に来ている多くの技能実習生の労働環境は良くないということです。

外国人技能実習制度を利用して日本で働いている外国人の多くは、不当に安い賃金で働かされています。

日本政策金融公庫の調査によると、外国人技能実習制度を利用せずに正社員として働いている外国人のおよそ6割は、月給が22万円以上を占めているということです。それに対して、技能実習生の場合は月給18万円以下という人が9割以上(ほぼ全員)を占めます。

(参照:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun1705_02.pdf

また、技能実習生に対して長時間労働を強いる企業もあります。

残業が多い月の企業の残業時間について、日本政策金融公庫が調べたところ、技能実習生の非雇用企業では残業が「なし」と答えた企業が全体のおよそ2割、「20時間以下」がおよそ5割と報告されています。

それに対して、技能実習生を雇用している企業では、「21~45時間」が全体の4割弱、46時間以上と答えた企業がおよそ2割です。

(参照:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun1705_02.pdf

つまり、技能実習制度を利用して実習生を受け入れている企業のほうが、「残業が多い=長時間労働」の割合が多いということが分かります。

実習生によっては、長時間労働によって残業代による収入が多く増えることを好む人もいます。なので、「残業が多い=労働環境が悪い」と性急に判断することはできません。しかし、企業によっては実習生に対する賃金未払いの問題が指摘されているのも事実で、技能実習生の待遇は決して良いものではありません。

技能実習生については、過酷な労働環境の下で働かされており、過労死に陥る人もいます。2010年~2017年の8年間で死亡した技能実習生は、174人にのぼると報告されています。これには作業中の事故だけでなく、交通事故や自殺といったものも含まれますが、大半の実習生は若く、亡くなった実習生の118人は20代であることが分かっています。

実習生の死因で最も多いのは、脳・心臓疾患です。若い実習生達が脳・心臓疾患で命を落とすということは、それだけ過酷な労働環境で働かされていることの証拠と考えられます。

セクハラ・パワハラ

技能実習生へのセクハラ、パワハラの問題も指摘されています。

実際に技能実習生として茨城県の農家で働いていた30代の中国人女性は、雇用主の父親である70代の男性からのセクハラが酷く、わずか1年で帰国したとのことです。裁判で明らかにされたところによると、「一緒に寝てくれ」「一緒にシャワーを浴びたい」などのセクハラ発言があったほか、性器を見せるなどのセクハラ行為があったとのこと。

裁判では雇用主の父親が反論し、証明ができなかったとして訴えは退けられましたが、同様のセクハラ行為に悩まされている実習生はほかにもいるのは事実です。

また、同僚や上司からのいじめ、暴力といった問題に悩まされている実習生もいます。同僚や上司から殴られたり、平手打ちにされたり、蹴られたり、といった日常的暴力を受けていることを管理団体に報告している実習生もいるのです。

借金

外国人技能実習制度を利用して日本に来る実習生の多くは、多額の借金を抱えており、それも実習生に問題が多い原因のひとつとなっています。

現在、外国人技能実習制度を利用して来日する実習生の中で、最も多いのがベトナム人です。

(参照:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000174642.pdf

そして、技能実習生の失踪者数として一番多いのもベトナム人です。

ベトナム人の技能実習生と日本企業とをつなぐパイプ役を果たしているのが、ブローカーです。問題は、悪質なブローカーが多いこと。

悪質なブローカーは「日本で働くと月収30万円以上は稼げる」などと言ってベトナム人の若者を勧誘します。日本語研修やビザ、航空券の手配、日本企業との面接をセッティングするなどの面倒を見るものの、その見返りとして100万円以上のお金の支払いを求めます。

そのため、多くの技能実習生が多額の借金を抱えて来日することになります。晴れて来日して働き始めても、月給は手取り10万円程度ということも少なくなく、生活費などを支払っていると、手元に残るお金がほとんどありません。結果として多額の借金を返すことができず、また技能実習生は受け入れ先の企業を変更できないという規定に縛られているため、失踪という選択肢を選ぶ人が増えていると考えられています。

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外国人技能実習制度における問題を回避するためには

外国人技能実習制度の利用を考えているなら、問題を回避するために次のことを実践してみましょう。

労働条件に配慮する

賃金を日本人労働者と同様の待遇にする

低賃金で外国人技能実習生を雇用している企業も少なくありません。しかし、実習生の働く意欲をかき立てるためにも、賃金を日本人労働者と同様の待遇にしましょう。

労働基準法に従った働き方をする

外国人技能実習制度を利用して来日した実習生については、長時間労働のほか、残業代未払い、もしくは残業外が法律で定められた賃金よりも低いといった問題がみられます。

失踪などの問題もなく、気持ち良く働いてもらうためには、労働基準法に従った働き方をしてもらうようにしましょう。

また、実習生が快適に生活できるように、生活面でのサポートをすることもできます。

受け入れ体制を整える

コミュニケーションがとれる環境をつくる

技能実習生は日本語の習得が不十分なため、コミュニケーションをとることが難しいという問題があります。なので、企業側で身振り手振りを用いて指導する、作業に使う道具についても実習生が理解しやすい呼び方に統一するなどの工夫をすることで、コミュニケーションがとれる環境づくりをしましょう。

異なる文化や生活習慣、価値観の違いを理解する

技能実習生と一緒に働いていると、「思ったように動いてくれない」と感じることがあるかもしれません。文化や生活習慣が異なるので、日本人と同じように行動してもらおうと期待すると軋轢が生まれる可能性があります。価値観の違いを理解するようにすると、お互いに働きやすい職場になっていくはずです。

外国人でもわかりやすいような教育体制を作る

日本人にとっては問題なく理解できる教育プログラムだとしても、外国人にとってはそうでないことがあります。その問題を解消するために、技能実習生の意見を取り入れつつ外国人用のマニュアルを作成する、熟練した技能実習生に新しく来た実習生を教育してもらうといった体制を作ることができるでしょう。

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まとめ

外国人技能実習制度による問題があるのは事実ですが、実習生を受け入れる側の企業の努力次第で、失踪などの問題を回避することが可能です。実習生が働きやすい労働条件を提示し、働きやすい職場の環境づくりを心がけましょう。実習生を受け入れる体制を整えることで、意欲的に働いてもらうことができるはずです。